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カナダ・オンタリオ州留学の予防接種|日本人に共通する「3つの穴」と、渡航前にやっておくこと

水谷通孝

カナダ・ウィニペグ在住。カナダ高校留学エージェントとして20年以上の実績を持ち、自身の3人の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

先に、いちばん大事なことをお伝えします。

オンタリオ州の学校に通うには、予防接種の記録を提出する必要があります。記録が揃わないと、登校できなくなることがあります。

そしてもう一つ。

日本の一般的な接種歴には、ほぼ全員に共通する「穴」が3つあります。ただし、その穴は、日本にいるうちに埋められます。

私は毎年、生徒さんの母子手帳を見ています。そして毎年、同じ3つが足りません。知らずに渡航して現地で慌てないように詳しくお伝えしますね。


オンタリオ州の仕組み(ISPA)を、短く

オンタリオ州には ISPA(Immunization of School Pupils Act/学齢児予防接種法) という州法があります。

  • 対象は、公立・私立を問わず、州内の学校に通うすべての就学者です(留学生も含まれます)。
  • 指定された 9つの疾患 について、接種の記録、または有効な免除の証明が必要です。
  • 記録が揃わない場合、最長20日間の出席停止になり得ます。

指定されている9疾患は、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ・麻疹・おたふくかぜ・風疹・髄膜炎菌・水痘(水痘は2010年以降生まれが対象)です。

「出席停止」は、理論上の話ではありません

コロナ禍の数年間、この法律の運用は事実上ゆるんでいました。その反動で、いまオンタリオ州は一斉に取り締まりを強めています。 2026年春には、州内の複数の地域で、数千人規模の生徒に出席停止の通知が出されました。

とはいえ、これは「記録を出していない生徒」に起きていることです。日本から出発する前に準備を済ませ、到着後に記録を登録すれば、何も起きません。 そのためにこの記事を書いています。


街によって、必要なワクチンは変わりません

よくいただく質問に、先に答えておきます。

「オタワとキングストンで、必要なワクチンは違いますか?」——違いません。

ISPAは州法です。オタワでも、キングストンでも、ウォータールーでも、ウィンザーでも、必要な中身は同じです。

違うのは、記録を提出する窓口(保健所)と、その手続きだけです。

地域提出先の保健所
オタワOttawa Public Health(オンライン登録:ICON)
キングストンKFL&A Public Health
ウォータールーRegion of Waterloo Public Health
ウィンザーWindsor-Essex County Health Unit

ただし、ここに一つ、注意点があります。

「必要なワクチン」は共通ですが、「その年度に、どの学年を審査するか」「実際に出席停止まで踏み込むか」という運用は、保健所ごとに違い、年度でも変わります。 2026年春も、大量の停止命令を出した保健所がある一方で、「今年度は停止は行わない」と表明した保健所もありました。

ここはインターネットで調べても、正しい答えが出てこない領域です。留学先が決まったあとに、その保健所の現行運用を確認する。これが確実な進め方です。


日本人に共通する「3つの穴」

ここが、この記事の核心です。

日本の定期接種は、よくできています。ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ(四種/五種混合)、麻疹・風疹(MR)、水痘。ほとんどはカバーされています。

それでも、カナダの基準と照らし合わせると、構造的に3つ足りません。 日本の制度の設計上、そうなるのです。

穴① おたふくかぜ(ムンプス)

日本の定期接種は「MR」です。Measles(麻疹)と Rubella(風疹)。

オンタリオが求めるのは「MMR」。麻疹+Mumps(おたふく)+風疹。

日本の「MR」に、おたふくは入っていません。

日本ではおたふくは任意接種なので、接種していない生徒が大多数です。これが、いちばん多い不足です。

穴② 髄膜炎菌(ACYW-135・4価)

日本では任意接種のため、ほぼ全員が未接種です。

オンタリオでは、思春期(Grade 7〜12)で Men-C-ACYW-135(4価結合型)が1回必須です。

注意:C型単独のワクチン(Men-C-C)では要件を満たしません。 4価であることを必ず確認してください。

穴③ 思春期の百日咳ブースター(Tdap)

日本では、11〜12歳で「DT(二種混合)」を打ちます。ジフテリアと破傷風だけで、百日咳が入っていません

カナダでは、思春期に**百日咳を含むブースター(Tdap)**が必要です。ここが抜けます。


さらに、個別に確認する2点

④ ポリオ

日本の四種/五種混合を受けている世代は、通常は足りています。

ただし、古い世代(経口ポリオワクチン=OPVの時代)は、回数がカナダの基準に届いていないことがあります。(日本のOPVから不活化ポリオ=IPVへの切り替えは2012年9月です。)

ポリオの取り扱いには、注意が必要です。

制度上、ポリオは9疾患の一つです。一方で、州のOPVガイダンス更新にともない、近年、ポリオがISPAのスクリーニング・出席停止の対象から外された年度があります(2025–2026年度)。

しかし、これは年度で変わります。 本稿執筆時点(2026年7月)で、次年度の扱いは公表されていません。

だから、この記事で「ポリオは大丈夫です」とは書きません。書けば、変わった年に嘘になるからです。

実務的な答えはシンプルです。ポリオは完了させておく。 取り締まりの対象かどうかにかかわらず、本人の防御のためにも、将来の適合のためにも、それがいちばん安全です。

⑤ 水痘(みずぼうそう)

2010年以降に生まれたお子さんが対象です。2009年以前の生まれであれば、要件の対象外です。

日本で水痘が定期接種になったのは2014年10月2010〜2011年生まれのお子さんは、未接種のことがあります。

ただし、かかったことがあるなら、それで証明できる場合があります。 母子手帳の「かかった病気」の記録ページを開いてください。ここは見落とされがちですが、非常に重要です。


【最大の落とし穴】MR と MMR は、別物です

もう一度書きます。ここを取り違えるご家庭が、毎年います。

  • 日本の MR = 麻疹 + 風疹(おたふくは入っていない
  • カナダの MMR = 麻疹 + おたふく + 風疹

母子手帳に「MR」と2回書いてあると、「麻疹・おたふく・風疹、全部済んでいる」と思ってしまいます。実は済んでいません。

海外で接種を受けた記録がある場合も同じです。その記録が MR なのか MMR なのかで、判定がまったく変わります。母子手帳を開くとき、ここだけは指差し確認をしてください。


渡航前チェックリスト

出発前に、この順番で進めてください。

  1. 母子手帳を開く。 予防接種の記録ページと、「かかった病気」の記録ページの両方(水痘の罹患歴確認のため)。
  2. 生年を確認する。 2010年以降の生まれかどうか(水痘要件の分かれ目)。
  3. 「MR」か「MMR」かを見分ける。 おたふくが入っているか。
  4. 不足を洗い出す。 ①おたふく ②髄膜炎菌4価 ③Tdap(百日咳を含む思春期ブースター) ④ポリオ ⑤水痘。
  5. 日本で接種する。 ①〜③はいずれも日本の医療機関で任意接種として受けられます。おたふく(MMRまたは単独)、髄膜炎菌4価、三種混合(百日咳を含む)。
  6. 英訳を用意する。 ワクチン名・接種日・ロット番号。母子手帳のままでは受理されません。
  7. 到着後、現地の保健所に記録を登録する。(例:オタワはICONというオンラインシステム)

効率化のヒント: ③思春期ブースターと④ポリオは、カナダでは Tdap-IPV という1本のワクチンで同時に満たせます。日本では「三種混合+不活化ポリオ」の組み合わせで対応することになります。接種医に相談してください。

接種には期間が必要です。 複数回の接種が必要なワクチンもあります。出発の3〜4ヶ月前には母子手帳を開いておくことをお勧めします。

準備の全体像(何ヶ月前に何をするか)は、こちらにまとめています。


実際にあったケース(すべて匿名)

私たちが実際に確認した記録から、傾向をご紹介します。

ケース1:3つの穴が、そのまま出た。 おたふく2回・髄膜炎菌・Tdap・ポリオの補完が必要でした。もっとも典型的なパターンです。水痘は、かかった記録があったため、それで証明できました。

ケース2:早めに動いて、ほぼ埋まった。 渡航準備としてまとめて追加接種を済ませていたご家庭。残ったのは髄膜炎菌とポリオの2点だけでした。早く動けば、穴はほぼ埋められるという好例です。

ケース3:麻疹・風疹すら1回だった。 母子手帳を開いたら、MMRが実質ゼロ回(麻疹1回・風疹1回・おたふく0回)。髄膜炎菌もTdapもポリオも不足。「たぶん大丈夫」で渡航しなくてよかった、と心から思ったケースです。

共通しているのは一つです。母子手帳を開くまで、誰も自分の状況を知らなかった。


よくあるご質問

Q. 街によって、必要なワクチンは変わりますか? A. 変わりません。ISPAは州法なので、オンタリオ州内はどこでも同じです。違うのは記録の提出先(保健所)と手続きだけです。

Q. 「MR」を2回打っています。それでも、おたふくが足りないと言われますか? A. 言われます。日本のMRに、おたふく(Mumps)は含まれていません。おたふくを満たすには、MMRまたはおたふく単独の接種が必要です。

Q. 子どものころに水ぼうそうにかかりました。接種は必要ですか? A. 罹患歴で証明できる場合があります。母子手帳の「かかった病気」の記録ページを英訳して提出してください。なお、水痘の要件は2010年以降生まれのお子さんが対象です。

Q. 母子手帳は日本語ですが、大丈夫ですか? A. そのままでは受理されません。ワクチン名・接種日・ロット番号を英訳したものを用意してください。

Q. 足りないワクチンは、カナダに着いてから打てますか? A. 打てます。記録を元に必要な予防接種が不足している学生には保健所から通知がきます。その指示に従って保健所、またはクリニックで接種が可能です。保険が効き費用も掛かりません。ですが、日本で済ませられるものは、日本で済ませておく。これが一番安心かと思います。


大切なことは、一つだけです

母子手帳を、開いてください。

足りないものは、たいてい日本で埋められます。問題になるのは、足りないことではなく、足りないと気づかないまま出発してしまうことです。

必要な接種の種類・回数は、最終的には接種する医師と、現地の保健所が判断します。この記事は、その前にご自身で当たりをつけるための地図です。


この記事について(免責)

本記事は、オンタリオ州の学校に通うために必要とされる就学要件を整理したものであり、医療上・法的な助言ではありません。個々のお子さんに必要な接種の種類・回数は、接種する医師(またはトラベルクリニック)が判断し、現地の保健所が最終確認します。制度と運用は年度によって変わります。 実際の準備にあたっては、必ず最新の情報をご確認ください。


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