3月に日本の中学を卒業し、9月からカナダの高校へ。この「全振り型」でカナダ高校留学を目指すとき、必ず出てくる問いがあります。
「4月から9月までの5ヶ月間、何をして過ごせばいいのか。」
多くの場合、留学エージェントに勧められるのは「4月から8月まで、語学学校で英語を勉強しましょう」という提案です。英語に不安があるうちに、まず語学を固めておく。一見、とても理にかなって見えます。
ですが、20年この仕事をしてきて、私はこの「5ヶ月まるごと語学留学」を、あまりお勧めしていません(ただし、一つだけ例外があります。これは記事の後半で詳しくお話しします)。もっと良い過ごし方があると考えているからです。先に結論をお伝えします。4月から6月は、1つ下の学年で「本物の高校」を3ヶ月体験する。語学学校は、7月と8月の2ヶ月で十分です。
なぜそう考えるのか。カナダに住み、3人の子を実際にカナダの学校へ通わせている、現役の留学エージェントの立場から、正直にお話しします。
なぜ「4〜8月まるごと語学留学」が”普通の選択”になりやすいのか
まず、この提案が広く行われていること自体は、無理もないことです。理由は二つあります。
一つは、保護者の自然な発想です。 「英語ができないまま高校に入れるのは不安。だから、まず英語をしっかり固めてから9月に臨みたい」。親として、これはごく当たり前の気持ちです。順番として、英語が先に来るのは自然に見えます。
もう一つは、手続きの構造です。 語学学校は、相手が私立の語学学校です。受け入れの仕組みが整っていて、申し込みがシンプルです。一方、高校留学は、多くの場合、公立の教育委員会を相手にします。ここには、語学留学よりも高い専門知識と、細やかな配慮が必要になります。つまり、語学留学のほうが「手続きが簡単」なのです。 簡単な道が既定路線になりやすいのは、自然なことだと思います。
私はこの二つを、否定するつもりはありません。どちらも理解できます。その上で、それでも私が5ヶ月の語学留学をお勧めしない理由を、正直にお伝えします。
それでも私が「5ヶ月の語学留学」をお勧めしない、二つの理由
結論から言えば、理由は二つあります。一つは英語の伸び方、もう一つは環境です。
理由①:同じレベルの生徒と5ヶ月では、「本物の英語」に触れにくい
語学学校というのは、その性質上、自分と同じくらいの英語レベルの生徒と、1日中、一緒に時間を過ごす場所です。5ヶ月間、その環境で学びます。語学学校と現地の高校では、規模、雰囲気、周りの英語力が全く違います。
もちろん、基礎を学ぶには良い面もあります。ですが、ネイティブスピーカーの自然なスピードや、教科書には出てこない生きた言い回しに触れる経験は、どうしても薄くなります。 英語は、同じレベルの中で完成させるものではなく、少し上の「本物」に浸ってこそ伸びる部分があります。5ヶ月をまるごと語学学校で過ごすのは、その意味で少しもったいないのです。
理由②:語学学校は「大都市」にあり、未成年を都市生活に馴染ませてしまう
語学学校は、その性質から、基本的に大都市にあります。そして、未成年の生徒を、いきなり大都市の生活に馴染ませてしまうことを、私は9月からの高校留学にとって良くないと考えています。
大都市の語学学校が手配するホームステイは、比較的、放任になりがちです。門限もゆるやかになりやすい。語学学校には、大人の同級生もいます。仲良くなるうちに、夜遊びや、飲酒・喫煙といった、10代の生徒にはまだ早い習慣に触れてしまう危険もあります。9月からの高校生活を、良いスタートで迎えるためにこそ、その手前の環境選びは慎重であってほしいのです。
私がお勧めするのは、「4〜6月に1つ下の学年で、本物の高校を体験する」こと
では、どうするのがいいか。ここで、日本とカナダの学年度のズレが、むしろ味方になります。
日本の学年度は3月に終わり、カナダは9月に始まります。この間の空白を、私は「本物のカナダの高校を、先に3ヶ月体験する時間」に充てることをお勧めしています。
具体的には、4月から6月まで、1つ下の学年で、カナダの高校に通わせてもらうという方法です。これをすることで、9月の本科スタートの前に、カナダのリアルな学校生活を先に経験できます。授業の進み方、先生との関わり、友達のつくり方、放課後の過ごし方──9月から本番で戸惑わないための「助走」を、3ヶ月かけて作れるのです。ネイティブの生徒に囲まれる環境なので、英語も、語学学校とは違う伸び方をします。
そして、語学学校は7月と8月の2ヶ月で十分だと、私は考えています。夏の2ヶ月で基礎を補い、3ヶ月の学校体験で得た「慣れ」と合わせて、9月の本科を迎える。これが、私が20年の現場でたどり着いた過ごし方です。
なぜ、この方法は誰にでも勧められるわけではないのか
正直にお伝えすると、この「4〜6月の高校体験」は、簡単に手配できるものではありません。カナダの高校の4月からの受け入れは、基本的に、その都度、教育委員会との交渉が必要になるからです。
ここが、私たちが力を入れてきた部分です。私たちは、多くの教育委員会と日頃から密にやり取りをし、良い関係性を築くことに、長く力を注いできました。だからこそ、通常は難しい4月からの受け入れが、うまく手続きできることがあります。「簡単だから語学留学」ではなく、「難しいけれど、その子にとって良い道」を選べるかどうか。 ここに、公立の教育委員会を扱えるエージェントの専門性が効いてきます。
なお、どの教育委員会が4月からの受け入れに対応しやすいかは、4月からも留学生を受け入れている教育委員会の記事にまとめています。また、現地の学校環境で高校留学の準備ができるアカデミック移行プログラム(ATP)という選択肢もあります。
ただし、これは”その子”による──語学留学が正解になる子もいます
ここまで「4〜6月に本物の高校を体験する」ことをお勧めしてきましたが、正直にお伝えします。これは、すべての子に当てはまる正解ではありません。
私が留学プランを立てるとき、いちばん大切にしているのは、「その子を見る」ことです。同じ4〜8月でも、最適な過ごし方は、お子さんの性格と、環境への慣れ方のペースによって変わります。
たとえば、シャイな子、慎重な子、新しい環境に慣れるのに時間がかかる子。「いきなり現地の高校に入るのは不安」という子には、無理に飛び込ませません。まず語学学校で、同じ立場の仲間と一緒に、少しずつ英語と生活に慣れていく。この子たちにとっては、5ヶ月の語学留学が、むしろ良い助走になります。これが、冒頭でお伝えした「一つの例外」です。
逆に、いきなり飛び込んだほうが伸びる子も、たくさんいます。好奇心が先に立つ子、変化そのものを楽しめる子は、4〜6月の高校体験で、驚くほど一気に伸びます。この子たちを5ヶ月の語学学校に留めておくのは、もったいない。
つまり、「語学留学は良くない」でも「高校体験が絶対」でもありません。大事なのは、その子の性格と慣れ方のペースに合わせて、過ごし方を設計すること。特定の型を全員に当てはめないこと──これが、私たちがいちばん大切にしているところです。
「英語に自信がないから、いきなり高校は不安」という方へ
「うちの子はまだ英語に自信がない」と感じた方へ。完璧な英語を仕上げてから行く必要はありません。カナダの公立校にはESL(英語を母語としない生徒へのサポート)があり、英語が発展途上でも受け入れてもらえます。むしろ、3ヶ月の学校体験でいちばん育つのは、英語そのものよりも「この環境でやっていける」という慣れと自信です。それが、9月からの本科を支えます。
英語力の目安については、カナダ高校留学に英検・IELTSは必要?で詳しく解説しています。
英語力も、性格も、慣れ方も、一人ひとり違います。だからこそ、「うちの子の場合はどうか」を、一度お聞かせください。次の一歩を、一緒に見つけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 中学を3月に卒業してから9月の入学まで、何をして過ごせばいいですか? A. 多くは「4〜8月まるごと語学留学」を勧められますが、私は、4〜6月に1つ下の学年で本物の高校を体験し、語学学校は7〜8月の2ヶ月にすることをお勧めしています。先にカナダの学校生活に慣れておくと、9月の本科を落ち着いて迎えられます。
Q. 4〜8月をまるごと語学学校で過ごすのは、なぜお勧めしないのですか? A. 二つの理由があります。語学学校は同じレベルの生徒と過ごすため、ネイティブの自然な英語に触れにくいこと。そして語学学校は大都市にあることが多く、未成年を早くから都市生活に馴染ませてしまうこと。9月からの高校留学に良いスタートを切るために、その手前の環境選びは慎重であってほしいのです。
Q. 「1つ下の学年」で入ることは、9月の本科に影響しますか? A. 4〜6月は、あくまで9月の本科前の「体験」と位置づけます。目的は、授業・生活・友達づくりに先に慣れること。お子さんの状況に合わせた具体的な設計は、カウンセリングで一緒に組み立てます。
Q. 英語力に自信がなくても、いきなり高校を体験して大丈夫ですか? A. 大丈夫です。カナダの公立校にはESL(英語サポート)があり、英語が発展途上でも受け入れてもらえます。3ヶ月の体験で育つのは、英語以上に「やっていける」という慣れと自信です。
Q. うちの子はシャイで慎重です。それでも、いきなり高校を体験させるべきですか? A. いいえ、その子によります。シャイな子・慎重な子・新しい環境に慣れるのに時間がかかる子には、まず語学学校で同じ立場の仲間と少しずつ慣れる5ヶ月が、良い助走になることもあります。逆に、いきなり飛び込んだほうが伸びる子もたくさんいます。だからこそ、その子の性格と慣れ方を見て、過ごし方を設計します。
Q. 4月からの受け入れは、どの学校でもできますか? A. いいえ。カナダの高校の4月受け入れは、基本的にその都度、教育委員会との交渉が必要です。日頃から多くの教育委員会と良い関係を築いているエージェントであれば、うまく手続きできることがあります。詳しくは4月受け入れの教育委員会の記事をご覧ください。
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