こんにちは。キャタリストカナダの水谷です。
カナダの高校に通い始めた留学生から、こんなメッセージが届くことがあります。
「明日、パジャマで学校に行く日らしいです。本当に行っていいんですか?」
本当です。カナダの高校には「スピリットウィーク(Spirit Week)」という1週間があり、その間は毎日テーマが決まっていて、生徒たちはそのテーマに合わせた服で登校します。月曜は学年ごとに色を決めて着る日、火曜は友達とおそろいの服を着る日、金曜はパジャマの日、という具合です。
日本の学校にはない行事なので、初めて聞くと驚かれると思います。でも私は、この1週間を、留学生にとってとても大事な機会だと考えています。英語がまだ十分でなくても、服装ひとつで「この学校の一員として参加している」ことを示せるからです。
この記事では、スピリットウィークの中身と、留学生がどう関わればよいかをお話しします。
結論 ― スピリットウィークで知っておきたい4つのこと
- 毎日テーマに合わせた服で登校する、生徒主体の1週間です。 企画するのは先生ではなく、生徒会や「リーダーシップ」の授業を取っている生徒たちです。
- 参加は自由です。 制服や普段着のまま登校しても、叱られることはありません。
- お金をかける行事ではありません。 家にあるもの、友達と貸し借りしたもので十分です。
- 留学生にとっては、会話のきっかけになります。 「その服いいね」から始まる会話は、英語の授業よりずっと気軽です。
スピリットウィークとは何か
スピリットウィークの「スピリット」は、スクールスピリット(school spirit)、つまり「自分の学校が好きだ」という気持ちのことです。その気持ちを、1週間かけて学校全体で盛り上げるのが目的です。
時期は学校によって違いますが、新学期が始まって間もない9月、ハロウィン前の10月下旬、冬休み前の12月、冬の2月など、年に何回か行う学校もあります。ふだんの授業はそのまま行われ、服装と、休み時間や昼休みのちょっとした催しだけが変わります。
実際のテーマの例
公開されている学校の告知から、実際の例を二つご紹介します。
例1:BC州の公立高校(2025年9月)
| 曜日 | テーマ | 内容 |
|---|---|---|
| 月 | Grade Colour Wars | 学年ごとに色が決まっていて(12年生は黒、9年生は黄色など)、その色の服を着る。先生はピンク。授業前にフェイスペイントのコーナーあり |
| 火 | Twin Tuesday | 友達やグループとおそろいの服を着る |
| 水 | Dress As Your Type | 「なりたい自分」や憧れの有名人の格好をする |
| 木 | Jersey Day | 好きなスポーツチームのユニフォーム(地元のNHLチームや、学校のチーム) |
| 金 | Pajama Day | パジャマで登校 |
参加した生徒は、生徒会のInstagramに写真が載ったり、ドリンク店のギフトカードの抽選に入れたりします。
例2:ウィニペグの公立高校のハロウィン・スピリットウィーク(2022年10月)
| 日 | テーマ | その日の催し |
|---|---|---|
| 火 | Twin Day(おそろいの日) | パンプキンパイ早食い大会 |
| 水 | Way Back Day(昔の年代の服装) | 劇場でロックコンサート |
| 木 | Tunes Day(好きなバンド・歌手の格好やグッズ) | ロックコンサート |
| 金 | PJ Day(パジャマの日) | 目隠しでゾンビ探しゲーム(2人1組) |
| 月 | ハロウィンの仮装 | 仮装コンテスト(その場で投票)、かぼちゃ彫りの投票、ホットドッグのランチ |
この学校では、参加した生徒が学生証をスキャンすると賞品の抽選に入れる仕組みでした。企画したのは生徒の委員会です。
このほか、よく見かけるテーマには次のようなものがあります。
- School Colours Day:学校のチームカラーを着る日
- Character Day / Movie Day:映画やドラマの登場人物になりきる日
- Tourist Day:観光客のような格好をする日(サングラスに派手なシャツ、首からカメラ)
- Hat Day:帽子をかぶってよい日
日本の学校行事との違い
日本の文化祭や体育祭と比べると、違いがよく分かります。
| 日本の文化祭・体育祭 | カナダのスピリットウィーク | |
|---|---|---|
| 期間 | 1〜2日に集中 | 1週間、毎日少しずつ |
| 準備 | クラス全員で何週間も準備 | 生徒会などの担当生徒が企画。参加する側の準備はほぼ服だけ |
| 参加 | 基本的に全員 | 参加するかどうかは本人が決める |
| 先生 | 指導する側・見守る側 | 生徒と一緒に参加する側 |
| 授業 | 当日は授業なし | 授業は通常どおり |
いちばん大きな違いは、「全員でやる」ではなく「やりたい人が、やりたいだけやる」という点です。全身で仮装してくる子もいれば、パジャマのズボンだけはいてくる子も、何もしない子もいます。どれも普通です。
企画しているのは誰か ― 生徒会と「リーダーシップ」の授業
スピリットウィークを企画・運営するのは、生徒会(Student Council)や、学校によっては「リーダーシップ(Leadership)」という授業を取っている生徒たちです。
BC州などでは、リーダーシップが単位になる正式な授業として開かれている学校があります。たとえばBC州ケロウナのある公立高校では、リーダーシップの生徒が、スピリットウィークのほか、学校のカーニバル、新入生を支えるプログラム、メンタルヘルス週間、テリー・フォックス・ラン(がん研究のための募金ラン)、卒業行事などを企画しています。
ここで、保護者の方にお伝えしたいことがあります。
日本では、学校行事は「先生が決めて、生徒が参加するもの」と感じている方が多いと思います。カナダでは、行事そのものを生徒が作ります。 留学生も、学校によっては生徒会やリーダーシップの授業に加わることができます。参加できるかどうか、どんな条件があるかは学校ごとに違うので、関心があれば入学後に学校のカウンセラーに聞いてみてください。
スピリットウィークのほかにも ― 服で気持ちを表す日
カナダの学校には、スピリットウィーク以外にも、服の色で気持ちを表す日があります。こちらは楽しむだけでなく、社会的な意味を持つ日です。
- オレンジシャツデー(9月30日):先住民の子どもたちが通わされた寄宿学校の歴史を学び、記憶する日。オレンジ色の服を着ます。「真実と和解のための国民の日」でもあります。
- ピンクシャツデー(2月の最終水曜日):いじめに反対する日。2007年、ノバスコシア州の高校で、ピンクのシャツを着て登校した9年生がからかわれたことに対し、12年生の2人がピンクのシャツを50枚買って配ったことから始まりました。
ピンクシャツデーが、二人の高校生の行動から全国に広がったという話は、カナダの学校文化をよく表していると思います。行事は誰かが用意してくれるものではなく、生徒が自分で始められるものなのです。
留学生にとって、なぜ大事なのか
英語がまだ思うように話せない時期、留学生がいちばん難しいと感じるのは、授業よりも「輪に入ること」です。休み時間にどこにいればいいか。誰に話しかければいいか。
スピリットウィークは、その壁を少し低くしてくれます。
テーマに合わせた服を着ていると、知らない生徒から「そのジャージ、どこのチーム?」と声をかけられます。答えは一言で済みます。英語が完璧でなくても、会話は始まります。
逆に、テーマに気づかず普段着で登校し、周りがみんなパジャマだった、という経験をする留学生もいます。悪いことではありません。ただ、その日の会話の入口を一つ逃してしまうのは、少しもったいないと思います。
ひとつ付け加えると、内気な子に「明るく、積極的になりなさい」と言う必要はありません。気質は変えなくていいのです。パジャマを着て登校する、というのは、性格を変えることではなく、一つの小さな行動を選ぶことです。その小さな行動が、次の会話につながっていきます。
▶ 内気なお子さんの学校選びについては、シャイな子の学校選びで詳しく書いています。
ウィニペグの高校に通う、わが家の子どもたちの話
私の子どもたちも、いまウィニペグの高校に通っています。スピリットウィークの話を聞くと、子どもたちがまず話すのは、先生のことです。
先生たちが、ノリノリで参加するのだそうです。
先生も生徒と一緒にテーマの服を着て、授業をする。大人がそこまで本気で楽しんでいると、生徒の側も「やっていいんだ」「思いきりやっても恥ずかしくない」と思える。だから楽しい、と子どもたちは言います。
先ほどのBC州の学校の例でも、学年ごとの色とは別に「先生はピンク」と、先生の色が決められていました。先生は見ている人ではなく、参加する人なのです。
日本の学校では、先生は行事を「指導する側」「見守る側」にいることが多いと思います。カナダでは、先生も同じ側に立って楽しむ。先生と生徒の距離が近いというカナダの学校の空気が、この1週間によく表れています。
日本から来た子にとって、これは大きな安心になります。周りの大人が楽しんでいる場所では、失敗を怖がらずに一歩を踏み出しやすいからです。
留学生がスピリットウィークを楽しむための5つのコツ
1. お知らせを見逃さない
スピリットウィークの日程とテーマは、朝の校内放送、学校のメール、生徒会のInstagramなどで、英語で知らされます。留学生はここを見逃しがちです。入学したら、学校と生徒会のInstagramをフォローしておくことをおすすめします。
2. ホストファミリーに聞く
「来週スピリットウィークなんだけど、ジャージデーって何を着ればいい?」と聞けば、多くのホストファミリーは喜んで一緒に考えてくれます。家族の中で使える話題が一つ増えます。
▶ ホストファミリーとの会話に使える英語は、ホームステイ英語フレーズ集にまとめています。
3. ツインデーは、友達を誘うチャンス
おそろいの服を着るツインデーは、「一緒にやらない?」と声をかける理由になります。断られても気にすることはありません。誘ったという経験が、次につながります。
4. 日本から持っていくと良いもの
特別な準備はいりませんが、次のようなものがあると、話のきっかけになります。
- 日本のスポーツチームのユニフォームやTシャツ(ジャージデーに。プロ野球やJリーグ、日本代表のものは目を引きます)
- 学校に着ていけるパジャマ・部屋着(上下そろったもの)
- 好きなキャラクターやバンドのTシャツ
高いものを買う必要はありません。現地で友達と貸し借りする子もいます。
5. 学校の服装のルールは守る
パジャマデーでも、学校の服装ルール(ドレスコード)は生きています。極端に肌が出る服や、ほかの人を傷つける表現の入った服は、どの日でも避けてください。迷ったら、ホストファミリーか先生に聞けば大丈夫です。
よくある質問
Q. 参加しないと、浮いてしまいますか? A. 参加しない生徒も普通にいます。参加は自由です。ただ、留学生にとっては会話のきっかけになるので、できる範囲で試してみることをおすすめしています。
Q. 私立や全寮制の学校にもありますか? A. あります。制服のある学校では、スピリットウィークの間だけ制服の代わりにテーマの服を着てよい、という形で行われることがあります。
Q. 毎年同じ時期にありますか? A. 学校によって違います。年に1回の学校もあれば、9月・10月・12月・2月など何回か行う学校もあります。日程は入学後に学校のお知らせで確認してください。
Q. お金はかかりますか? A. 基本的にかかりません。その週の昼休みにホットドッグやお菓子の販売がある学校もありますが、数ドル程度で、買うかどうかも自由です。
学校選びは、時間割だけでは決まらない
学校を選ぶとき、多くのご家族は、授業の内容、ESL(英語のサポート)、費用、町の大きさを比べます。どれも大切です。
ただ、留学生が毎日を過ごすのは、授業の時間だけではありません。休み時間、昼休み、放課後、そしてスピリットウィークのような行事の時間があります。その時間に、どんな入口がある学校なのか。そこまで見て選べると、留学の1年目はずっと過ごしやすくなります。
「うちの子に合うのは、どんな学校だろう」と思われたら、一緒に考えましょう。特定の学校をおすすめするのではなく、お子さんの性格や目標をうかがったうえで、合いそうな環境を一緒に探します。

