「カナダ高校留学、失敗したらどうしよう」
お子さんの留学を検討している保護者の方から、このような不安を打ち明けられることがあります。当然の心配です。大切な子どもを、言葉も文化も違う国へ送り出すのですから。
この記事では、20年以上カナダ留学の現場に関わってきたエージェントとして、「失敗」について正直に書きます。途中帰国の原因、実際の割合、失敗してしまったときにどうなるか、そして防ぐために親子にできること。きれいごとは言いません。
まず「失敗」の定義をはっきりさせます
留学には、期待を上回る経験もあれば、期待を下回る経験もあります。
思っていたより友達ができた。自分でも驚くほど英語が伸びた。ホストファミリーが本当の家族のようになった。そういう「想像以上」の経験をする学生がいます。
一方で、思っていたより授業が難しかった。友達ができるのに時間がかかった。ホームステイ先との相性に悩んだ時期があった。そういう経験をする学生もいます。
プラスもマイナスも、どちらも留学です。どちらの経験も、本人の中に残ります。
私はそのどちらも、「失敗」とは呼びません。
この記事での「失敗」は、途中帰国です。
予定していた留学期間を全うできずに帰国すること。これが、親子にとって最も避けたい結果です。逆に言えば、多少うまくいかないことがあっても、最後まで留学を終えられれば、それは成功です。その経験は必ず本人の財産になります。
では、カナダ高校留学で途中帰国になる原因は何か。20年の経験から、大きく2つのパターンがあります。
途中帰国の原因①:ルール違反
カナダの高校留学プログラムには、入学前に署名する同意書があります。そこには、未成年として守るべきルールが明記されています。
喫煙、飲酒、大麻(マリファナ)の使用、暴力、万引き──こうした行為が発覚した場合、学校や教育委員会は、その学生をプログラムから除籍し、帰国させます。
カナダでは成人(18〜19歳以上、州によって異なる)であれば大麻は合法です。しかし未成年には適用されません。また、カナダ社会は未成年の飲酒や喫煙に対して日本以上に厳しい目を向けます。「日本でも普通にやってた」は通用しない世界です。
これはプログラム側としては当然の判断です。未成年を預かる責任がある以上、同意書に署名してルールを破った学生を、いつまでも保護し続けることはできません。
なぜ彼らはそういう行動をとるのか
私はこういうケースに関わるたびに、その子の背景を考えます。親子関係に問題を抱えていた子、そもそも自分の意志ではなく親に言われて来た子、日本での居場所を失って逃げるように来た子。いろんな事情が見えてきます。
ただし、これは留学エージェントの範疇を超えた領域です。私にできることには限界があります。だからこそ、送り出す前の段階で、子どもが本当に留学を望んでいるかどうかを確認することが、何より大切です。
途中帰国の原因②:スマホによる留学の空洞化
こちらが、現代のカナダ高校留学における最大の課題だと私は思っています。
手元にスマホがある。タップひとつで、好きな動画、ゲーム、SNS、日本の友達とのトーク。エンターテイメントが無限に詰まった小さな機械を、学生は四六時中持ち歩いています。
留学先では、毎日チャレンジの連続です。
英語が聞き取れない。授業の内容がわからない。ホストファミリーとの会話が続かない。友達ができない。そういう「小さな挫折」が積み重なったとき、人は本能的に楽な方向へ逃げます。
ベッドルームに戻り、スマホを開く。
日本語のYouTubeを見れば笑える。友達とLINEすれば安心できる。慣れ親しんだ刺激が、すぐそこにある。
脳科学の言葉で言えば、これはドーパミンの問題です。スマホの通知、動画のおすすめ、ゲームのリワード──これらは脳のドーパミン回路を非常に効率よく刺激するように設計されています。それに慣れてしまうと、「英語で話しかける」「わからない課題に取り組む」といった、努力が必要で結果がすぐ出ないことに、脳が反応しなくなっていきます。
そしてこういう流れになります。
夜中までスマホ → 朝起きられない → 学校に遅刻する → 授業に集中できない → 課題を出さない → 単位が取れない → ホストファミリーとも関係が悪化する → 何度も注意される → 帰国勧告
最初の入口は「ちょっとスマホを見るだけ」です。でも気づいたときには、留学の中身がほぼ空になっている。そういうケースを、私はこれまでに何度も見てきました。
カナダ高校留学で途中帰国になる割合は?
「失敗する人はどのくらいいるのか」は、多くの保護者が気になるところだと思います。正直に数字をお伝えします。
キャタリストカナダでは現在、年間130人前後の高校生をサポートしています。そのうち途中帰国になるのは、毎年1名です。
割合にすると、1%以下です。
残念ながら、毎年必ず1名はいます。これは事実です。ただ同時に、それ以外の129名以上は、辛い時期があっても乗り越えて留学を終えています。
この数字を公表するエージェントは多くありません。途中帰国の実態を明かすことを避ける会社がほとんどだからです。ただ私は、この数字こそが保護者に伝えるべき現実だと思っています。留学は怖いものでも、必ず失敗するものでもない。しかし、ゼロリスクでもない。その両方を正直に伝えることが、エージェントの誠実さだと考えています。
途中帰国になったら、留学は終わりなのか
一つ、あまり語られていないことをお伝えします。
途中帰国になった場合でも、セカンドチャンスを与えてくれる教育委員会が存在します。
警察に逮捕されて強制送還されるような深刻なケースは別です。しかしそこまでに至らない場合、受け入れ先を変えてもう一度留学を再開できる可能性があります。
セカンドチャンスの形は一つではありません。いくつか実例をお伝えします。
- ルール違反で教育委員会のプログラムを除籍になったが、別の教育委員会で受け入れてもらい、留学を再開して卒業まで全うした学生がいます。
- ホームステイでの生活が合わず、精神的に追い詰められた学生が、学生寮のある全寮制の学校に転校し、そのまま卒業まで在籍したケースがあります。環境を変えることで、別人のように生き生きとした留学生活を取り戻した例です。
- 留学生が少なく、日本人もいない環境を希望したが、英語の壁が高過ぎた。途中から留学生が多く、自分の英語レベルに合わせた授業が受けれる環境へ移動して卒業し、今はカナダの大学に通っている子もいます。
「今の環境がうまくいかない」と「留学そのものが終わり」は、イコールではありません。
私自身も3人の子を持つ保護者です。だからこそ、問題が起きたとき、事情はどうあれ、なんとか高校卒業まで辿り着けるように、自分の持てる人脈を全部使って次の一手を考えます。甘いと思われるかもしれません。でもそれが、私にできることだと思っています。
そのために、現地の学校やプログラムを実際に視察し、カンファレンスに参加し、信頼できるパートナーとの関係を地道に築いてきました。「次の一手」が出せるのは、その積み重ねがあるからです。
諦める前に、必ずご連絡ください。
なお、キャタリストカナダの20年の歴史の中で、学生が逮捕されたケースは一件もありません。
カナダ高校留学の失敗を防ぐためにできること
① 渡航前に、子どもの夢と目標を語らせる
具体的な対策の前に、もっと根本的なことがあります。
子どもがカナダで何をしたいのか。留学を通じてどんな自分になりたいのか。その夢や目標について、親子でしっかり話すことです。
「英語が話せるようになりたい」「カナダ人の友達を作りたい」「将来海外で働きたい」「スポーツを本気でやりたい」──何でもいい。子ども自身の言葉で語らせてください。
親が「留学させてあげるから頑張りなさい」と言うのと、子どもが「自分はこれをやりたくてカナダに行く」と言うのでは、留学中の困難への向き合い方がまったく変わります。これはあなたの子どもの留学であり、子ども自身の人生です。その自覚(Self Awareness)を、出発前に自分の言葉で確認させることが、保護者にできる最も大切な準備です。
ティーンエージャーは、親から「自覚を持ちなさい」と言われても反発します。でも、自分が語った夢や目標は、自分の中に残ります。
② 目標から逆算して、スマホのルールを一緒に決める
子どもが自分の目標を語ったら、次はそこから逆算します。
「その目標を叶えるために、スマホの使い方はどうしようか」と問いかけてみてください。「夜10時以降は部屋にスマホを持ち込まない」「ホストファミリーとの食事中はスマホを置く」──具体的なルールを、本人が自分で決める形にすることが大切です。
親に言われたルールは破りたくなる。でも自分で決めたルールは、自分の目標とセットになっているから、守る理由が生まれます。これ自体が、留学を自分ごととして捉えるための練習になります。
③ 定期的に留学を報告する相手を、カナダに持たせる
留学中に最も大切な習慣の一つが、定期的に自分の留学を誰かに報告することです。
「日本の親に元気だと伝える」とは違います。カナダにいる、英語で話せる、信頼できる大人に、今週何があったか、何が難しかったかを話す。それだけで、問題が小さいうちに発見され、一人で抱え込まずに済みます。
スマホで日本の友達とつながり続けることと、現地の信頼できる大人に報告することは、まったく別のことです。前者は「逃げ場」、後者は「踏ん張る力」になります。
キャタリストカナダでは、そのためにアメリカ人ネイティブ講師のジョニー先生が、留学中の学生サポートを専任で担当しています。
渡航前にオンラインで顔合わせをして関係を作り、留学が始まってからも定期的に英語で話す。困ったこと、うまくいかないこと、ホストファミリーとの関係。そういったことをジョニー先生に英語で話す習慣が、留学中の大きな支えになります。
さらに、ジョニー先生から日本人スタッフへ情報が共有される仕組みになっています。問題が小さいうちにエージェントが動ける体制です。これが、キャタリストカナダのネイティブサポートが他のエージェントと根本的に違うところです。
最後に正直に言います
カナダ高校留学で途中帰国になる子は、全体から見れば少数です。多くの学生は、うまくいかない時期を乗り越えて、留学を終えて帰ってきます。
ただ、「うまくいかなかった」と「途中帰国」の間には、本人と家族にとって大きな違いがあります。
私はこの仕事を20年以上続けてきて、途中帰国になった子たちのことを、今でも覚えています。もったいなかった、と思うケースがほとんどです。それはその子たちの能力や人柄の問題ではなく、準備と環境の問題でした。
だからこそ、送り出す前の段階で、保護者と一緒に考えたいのです。
不安なことがあれば、ぜひ一度お話しください。
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