「セブ島の方が楽しかった」。その一言に、留学の本質が隠れていた。

先日、日本に一時帰国していたときのことです。以前、私たちがサポートした一人の若者と、会って話をする機会がありました。

彼は大学を休学して、フィリピンのセブ島に4ヶ月、そのあとカナダに8ヶ月、ワーキングホリデーで過ごして帰ってきたところでした。久しぶりに会って、留学はどうだったかと、いろいろ話を聞かせてもらいました。

そのとき彼が言った一言が、私の心に長く残っています。今日は、そのことについて、正直に書きたいと思います。

目次

「セブ島の方が、楽しかったです」

彼は、こう言いました。「フィリピンのセブ島の留学の方が、楽しかったです」。

これは、彼の本当に正直な感想だったと思います。そして、正直であること自体は、とても良いことです。私は彼を責めるつもりは全くありません。

ただ、この一言を聞いたとき、私はある大切なことを考えずにはいられませんでした。それは、日本の若者が海外で過ごすときに、しばしば欠けてしまう「ある感覚」のことです。

その感覚とは——自分の海外生活を、自分自身の手で良いものにしていく、作り上げていくという感覚です。

セブ島の語学留学は、なぜ「楽しい」のか

誤解しないでいただきたいのですが、私はセブ島の語学留学を批判したいわけではありません。実際に私も現地の学校を視察したことがありますし、英語を学ぶ環境としては、とても良いと思っています。

ただ、セブ島の語学留学が「楽しい」のには、はっきりとした理由があります。

多くのセブ島の学校は、リゾートホテルのようなキャンパスで、寮と教室が同じ場所にあります。そこに、たくさんの日本人の若者——10代後半から20代の子たちが集まって暮らしています。同世代の仲間に囲まれて生活すれば、それは楽しいに決まっています。

そして、ここが大切なところです。セブ島の環境では、自分で英語を話す機会を見つける必要もなければ、友達作りに困ることもありません。成長の機会を、自分で探して、模索して、苦労する必要がない。すべてが、ある程度お膳立てされている。

だから、楽しい。でも、その「楽しさ」は、自分で作り出したものというより、用意された環境の中での快適さなんです。

「楽しかった」の裏返しにあるもの

ここで、彼の言葉をもう一度考えてみます。「セブ島の方が楽しかった」。これを裏返すと、こうなります。

「カナダは、セブ島ほど楽しめなかった」。

そして、もう一歩踏み込むと、こう言い換えることもできます。「カナダを楽しむ、カナダでの生活を自分で良いものにするための、マインドセットや勇気や行動力が、足りなかった」。

カナダのワーキングホリデーは、セブ島とは違います。自分で生活を組み立て、自分で英語を話す機会を探し、自分で居場所を切り拓いていかなければなりません。そこには、苦労があります。思い通りにいかないことの連続です。

でも——その苦労こそが、人を成長させるのだと、私は思っています。快適な場所では、人はあまり変わりません。うまくいかないことと向き合い、それでも前に進もうともがく中で、人は本当に強くなる。

彼は、その苦労を「楽しくなかった」と感じた。残念ながら、その苦労が成長の種だったということに、まだ気づいていないのかもしれません。

19歳に、期待しすぎでしょうか

正直に言うと、私は彼の話を聞きながら、少し残念に思いました。でも同時に、こうも思ったんです。「これは、彼一人の問題ではない」と。

カナダを、オーストラリアを、ニュージーランドを「楽しめなかった」若者は、決して少なくありません。そして多くの場合、彼ら自身は「なぜ楽しめなかったのか」に気づいていません。「自分には合わなかった」「運が悪かった」で終わってしまう。

でも、本当はそうではない。海外生活は、与えられるものではなく、自分で作り上げるものだという、たった一つの視点。これを、留学に行く前に知っているかどうかで、同じ環境でも結果は大きく変わります。

19歳の彼に、その場でこれを気づけと求めるのは、酷なことかもしれません。誰も、それを彼に教えてこなかったのですから。

だからこそ、これは私たちエージェントの仕事だと思っています。まだ留学していない若者と、その保護者の方に、「楽しいかどうか」ではなく「自分で良いものにできるかどうか」という視点を、そっと手渡すこと。間に合ううちに。

留学を考えているあなたへ

もし今、お子さんの留学を考えているなら、一つだけ覚えておいてほしいことがあります。

留学先の「快適さ」や「楽しさ」だけで選ぶと、本当の成長の機会を逃してしまうことがあります。大切なのは、お子さん自身が「ここで、自分の力で生活を作っていくんだ」という気持ちを持てるかどうか。そして、その気持ちを、留学前にどう育てておくか、です。

私たちキャタリストカナダのカウンセリングでは、学校や費用の話だけでなく、こうした「留学に向かう心構え」についても、正直にお話しします。楽な道をおすすめすることはありません。でも、その子が本当に成長できる道を、一緒に考えます。

「うちの子は、海外でやっていけるだろうか」——そんな不安も含めて、まずはお話を聞かせてください。

それでは、また次の記事で。

キャタリストカナダ 水谷

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この記事を書いた人

カナダ・ウィニペグ在住。株式会社キャタリストカナダ代表。1998年、英語ゼロでカナダへワーキングホリデー渡航。2004年、28歳で仕事を辞め妻とともにハリファックスへ語学留学。英語教師資格CELTA取得・TOEIC935点。2007年創業以来、カナダ高校留学・語学留学・サマーキャンプの支援を続けています。自身の3人の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住だからこそ伝えられるリアルな情報を、保護者・学生・社会人の皆さんにお届けします。

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