留学のことを語るとき、私たちはつい「現地でどう成長するか」ばかりを考えます。でも、本当の試練は帰国してから始まることがあります。
先日、オンタリオ州の学校を視察したとき、ある日本人の女の子がぽつりと打ち明けてくれた悩みがありました。とても日本人らしい、そして切実な悩みでした。
「英語が上手なこと」が、からかいの対象になる
その子が言ったのは、こういうことです。
日本に帰ると、英語が上手なこと、発音がいいこと、とっさに英語が出てしまうことを、「海外かぶれ」ってからかわれるんです。
考えてみてください。その子は、勇気を出して、たくさん間違えて、人前で恥をかきながら英語力を身につけてきました。その努力の結果として、自然な発音や、とっさに口をついて出る英語があるわけです。
それなのに、日本に帰った途端、その成長が「浮いている」「気取っている」「カッコつけている」と扱われてしまう。手に入れたものを誇るどころか、隠さなければいけない空気になる。
本人にとって、これほどつらく、理不尽なことはありません。
なぜこんなことが起きるのか
これは、その子に問題があるわけではありません。日本社会に昔からある、ある感覚が背景にあります。
「出る杭は打たれる」——周りと違うこと、抜きん出ていることを、無意識に引っ込めさせようとする空気です。
英語の発音がいい、というだけのことが、なぜか「自慢している」かのように受け取られてしまう。からかう側に強い悪意はないことも多いのですが、言われた本人は、せっかくの力を出すのをためらうようになります。
そして多くの子が、こう考えてしまいます。「日本では、英語を上手に話さないほうがいい」と。せっかく払った努力や成長が、こうして使われないまま眠ってしまうのです。
からかう言葉は、あなたの価値を下げない
ここで、留学する子にも、保護者の方にも知っておいてほしいことがあります。
からかう側の言葉は、あなたの努力の価値を、何ひとつ下げません。
むしろ、それはどこか照れ隠しに近いものです。自分が出来なかった努力や成長、それをやり遂げたあなたに対する、ばつの悪さ。だから茶化すことで、自分と同じ位置まで引き戻そうとする。からかいの言葉は、あなたの問題ではなく、言う側の問題なのです。
誤解しないでください。からかっている方も悪い子ではありません。大人でも同じことがあります。人間誰しも、自分の隣にいた同じ境遇・同じレベルだと思っていた人が、自分を飛び越えて成長していくことに脅威を感じてしまいます。自分の足元が崩れるような恐怖を感じることは不思議なことではありません。
それでも、あなたがカナダで努力して手に入れた力を、人の顔色を見て引っ込める必要はありません。発音を、わざと下手にする必要もありません。
これは、留学中の悩みと根っこが同じ
おもしろいことに、この「帰国後の壁」は、留学中によくある「間違える怖さ」と、まったく同じ構造をしています。
- 留学中の壁:「間違えたら、笑われるかもしれない」
- 帰国後の壁:「上手すぎたら、バカにされるかもしれない」
正反対のことのようで、根っこは一つ。どちらも、他人の反応に合わせて、自分を小さくしてしまうということです。
留学中に多くの子がぶつかる「間違える怖さ」については、「日本人が多すぎる」と感じたら|カナダ高校留学で本当に大切なことで詳しく書いています。
だから、本当に大切なのは英語力そのものよりも、「人の目に、自分の成長をあわせない」という心の強さなのかもしれません。
成長を恥じないことが、かっこいい
私たちが大切にしているのは「かっこいい日本人を世界に増やす」こと。
ここで言う「かっこいい」とは、流暢に英語を話せることではありません。 間違えることを恐れず一歩踏み出せること。そして、その先で手に入れた成長を、誰に何と言われても恥じないこと。 その姿勢のことです。
留学を考えているご家庭には、ぜひ出発前に、そして帰国後にも、お子さんとこのことを話してみてください。
手に入れた力は、人の目を気にして隠さなくていい。堂々としていていいんだよ。
留学は、現地で終わるものではありません。帰ってきてから、その経験をどう誇れるか。そこまで含めて、私たちはお子さんの成長を支えたいと考えています。
留学の準備や、お子さんの成長について相談したい方は、カウンセリングフォームからお気軽にどうぞ。

