留学のご相談で、保護者の方が最後に小さな声で聞かれること。それは費用でも学校選びでもなく、たいてい、これです。
「留学生でも、友達はすぐ出来ますかね?」
正直にお答えします。カナダの高校に入っても、いきなり友達はできません。 席が隣になっただけで、言葉も文化も違う子と、すぐに打ち解けられるわけではない。これは、留学を20年見てきた私の、いつわらざる実感です。
けれど、同じくらい確かなことがあります。「つながる入口」を持って行った子は、そこから仲間ができていく。 英語がまだ初級でも、です。今日は、その「入口」の話をさせてください。お子さんが現地で居場所を見つけられるかどうかを、いちばん左右する話だと思っています。
人は、「同じ」でつながる
少し、当たり前のことを言います。人が誰かと親しくなるとき、きっかけになるのは「共通点」です。同じことに夢中になっている。同じ立場で悩んでいる。同じ時間を、同じ場所で過ごしている。──大人でも、子どもでも、国が違っても、ここは変わりません。
カナダの高校の教室を思い浮かべてください。そこにいるのは、生まれたときから英語で話し、幼い頃からの友人関係ができあがっている現地の子たちです。そこへ、言葉の不自由な留学生がひとり入っていく。「話しかけてもらえるのを待つ」だけでは、時間はどんどん過ぎていきます。 待っていて向こうから来てくれるほど、思春期の人間関係は甘くありません。
では、どうやって最初の一本の糸が生まれるのか。私の経験では、答えははっきりしています。その子が持っている「共通のなにか」を通じて、です。
「つながるコンテンツ」を持って行く
私はこれを、その子が持つ**「つながるコンテンツ」**と呼んでいます。バスケットボールやサッカーといったスポーツ。吹奏楽、合唱、ダンス。ロボティクス、演劇、美術。──要は、言葉が完璧でなくても、一緒に体を動かし、手を動かし、時間を共有できる活動のことです。
なぜこれが効くのか。理屈は単純です。
ひとつ、共通の言語がいらない。パスが通れば、リズムが合えば、コードが動けば、そこに会話は要りません。英語がまだ苦手でも、活動そのものが「共通語」になります。
ふたつ、繰り返し会える。部活やクラブは、毎日・毎週、同じ顔ぶれで集まります。人は、繰り返し顔を合わせる相手に、自然と心を開いていく。教室で隣になるより、放課後のコートで何度も汗を流すほうが、ずっと早く距離が縮まります。
みっつ、「あの子」になれる。「バスケがうまい留学生」「ダンスの子」──活動の中で役割を持てた瞬間、その子は”英語が話せない外国人”ではなく、”チームの一員”になります。この転換が、留学の充実を決めます。
日本で吹奏楽をやっていた子、ずっとダンスを続けてきた子、地元のクラブでボールを追ってきた子。そういう子たちは、カナダでも同じ活動に飛び込むことで、言葉の壁を待たずに、仲間のいる場所へたどり着いていきます。
実話:バスケットボールが支えた、2年間
ここで、ひとつの物語を紹介させてください。ご本人とご家族の許可をいただき、お名前も学校名もすべて伏せた形で書いています。
その子は、日本で高校1年生を終えたあと、BC州の公立高校に、11年生から入学しました。最初の1年は日本の高校に籍を残したままの留学です。そして1年を終えたとき、本人が「このままカナダで卒業したい」と決意し、日本の高校を辞めて、12年生も海を渡りました。──ここまでで、すでにひとつ、大きな選択があります。
この子の「つながるコンテンツ」は、バスケットボールでした。
ところが、留学の途中で、ひとつの壁にぶつかります。同じ競技でも、学校によって力の入れ方は違うのです。最初の学校は、その子が本気で打ち込むには、女子の環境が十分ではありませんでした。本人にとって、バスケは単なる部活ではなく、現地での居場所そのものです。ここが弱ければ、留学全体が揺らぎます。
そこで私たちは、同じBC州の別の高校へ、転校の手続きを進めました。 より本気でバスケに打ち込める環境へ、移し替えたのです。そして、その新しい学校での12年生を支えたのも、やはりバスケットボールでした。コートの上で仲間ができ、居場所ができ、その子は無事に卒業までたどり着きました。
物語には、私の胸を打った締めくくりがあります。卒業式に、保護者の方が、日本からカナダまで足を運ばれたのです。我が子の2年間の集大成を、その目で見届けるために。現地では、お子さんが世話になったバスケのコーチにも会うことができ、「とても良い先生でした」と、心から安堵した声で教えてくださいました。
帰国後、ご本人とお母様から、こんな言葉をいただきました。
無事に、大きな怪我も病気もなく帰ってこられたこと。転校させてもらったことで、学校生活がより充実したこと。困ったときにいつもすぐ対応してもらえて心強かったこと。そして──「留学のエージェントをお願いして、本当に良かった」。
この物語が教えてくれるのは、2つのことだと思っています。ひとつは、つながるコンテンツ(この子にとってのバスケ)が、言葉の壁を越えて居場所を作るということ。もうひとつは、入学したあとでも、その子が伸びる環境に選び直せるということです。
環境は、「入ってから」も見直していい
留学というと、「どの学校に入るか」を決めたら終わり、と思われがちです。でも、私はそうは考えていません。
同じ競技でも、学校によって男女で力の入れ方が違うことがある。同じ活動でも、その学校にどれだけの土壌があるかは、実際に通ってみないと分からない部分があります。だからこそ私は、学校選びの前に、保護者の方にこうお伝えしています。**「お子さんが本気で打ち込みたいものが、その学校で本当に伸ばせる環境か。それを、入学前にできる限り確認しましょう」**と。
そして、もし入ってから「思っていた環境と違った」となったときに、我慢させ続けるのではなく、その子が輝ける場所へ選び直せること。これも、私たちがお手伝いできる大切な役割です。先ほどの物語で、もし最初の学校にとどまっていたら、あの充実した2年間は生まれなかったかもしれません。
私たちが特定の学校をおすすめすることはありません。私が探したいのは、その子・そのご家庭に合った場所です。そしてそれは、一度で完璧に見つからないこともある。だから、入ってからも一緒に見直していく。それでいいと、私は思っています。
留学の充実を決める、3つのこと
ここまでの話を、整理します。お子さんの留学が充実するかどうかは、大きく3つで決まると、私は経験から見ています。
英語力は、「入口を開ける鍵」です。 ある程度の準備(たとえば英検2級以上が、ひとつの目安です)があると、活動の輪に入っていくときの負担がずっと軽くなります。ただし、完璧である必要はありません。公立高校にはESL(英語を第二言語とする生徒のサポート)があり、英語は現地でも伸びていきます。鍵は、扉を開けるためのもの。持って行くに越したことはありませんが、それだけで留学が決まるわけではありません。
活動(つながるコンテンツ)は、「仲間を育てる土壌」です。 今日いちばんお伝えしたかったのが、ここです。英語という鍵で扉を開けたあと、その子が根を張り、仲間を育てていく土壌になるのが、この活動です。
そして、性格は、その子の「ペース」です。 ここは、誤解のないようにお伝えしたい。内向的な性格は、直す必要のあるものではありません。 静かな子には、静かな子の、じっくりと深い関係を築く力があります。変えるべきは性格ではなく、**その気質が活きる「環境の選び方」**です。にぎやかな大人数のチームが合う子もいれば、少人数で落ち着いた活動のほうが伸びる子もいる。大切なのは、その子のペースに合った土壌を選ぶことです。
では、「夢中になれるものが、まだない子」は?
ここまで読んで、こう感じた保護者の方もいらっしゃると思います。「うちの子には、これといって打ち込んでいるものが、まだないんです」と。
大丈夫です。まだ10代です。 今、答えが出ていなくて、まったく問題ありません。
むしろ、留学という新しい環境は、まだ出会っていない「夢中になれるもの」に出会う場でもあります。日本ではやったことのなかったスポーツに、カナダで初めて触れる子。現地の演劇やアートの授業で、思いがけず才能が開く子。私は、そういう子を何人も見てきました。「持って行くもの」がなくても、「向こうで見つけるもの」がある。それも、留学の醍醐味のひとつです。
だから、今なにもなくても、焦らないでください。大事なのは、その子が興味を持ったときに、それを伸ばせる環境を選んでおくこと。そのために私たちがいます。
よくあるご質問
Q. 英語が話せないと、友達はできませんか? いいえ。英語は「入口を開ける鍵」であって、友情そのものではありません。スポーツや音楽などの活動を通じてなら、言葉が拙くても仲間はできていきます。ただし、ある程度の英語の準備(英検2級前後が目安)があると、その入口に入っていく負担が軽くなります。
Q. 内気な子には、留学は向いていませんか? 内気であること自体は、留学の妨げにはなりません。静かな子には、深く長い関係を築く力があります。大切なのは性格を変えることではなく、その子のペースに合った活動や学校の規模を選ぶことです。
Q. 日本で部活をしていませんでした。それでも大丈夫ですか? 大丈夫です。まだ夢中になれるものが見つかっていないだけで、留学先で新しく出会うこともよくあります。今なにかを持っていることより、興味を持ったときに伸ばせる環境を選んでおくことが大切です。
Q. 入ってから「合わない」と感じたら、どうなりますか? 我慢させ続ける必要はありません。その子が伸びる環境へ、転校という形で選び直せる場合があります(学校や地域により条件は異なります)。入学がゴールではなく、入ってからも一緒に見直していく、という考え方で私たちはサポートしています。
お子さんが夢中になれるもの、一緒に探しませんか
お子さんの「つながるコンテンツ」は、なんでしょう。もう夢中になっているものがあるなら、それを伸ばせる環境を。まだ見つかっていないなら、これから出会える環境を。──その子に合った場所を、一緒に考えるところから始めさせてください。
売り込みは一切いたしません。まずは気軽に、お子さんのことを聞かせてください。

