「野球は続けさせたいんです。でも、うちの子は強豪校のレギュラーだったわけじゃない。そんな子でも、カナダに居場所はありますか?」
カウンセリングで、この質問を本当によく受けます。そして多くのご家庭が、聞いたあとに少しほっとした顔をされます。カナダには「うまい子だけの野球」ではない場所が、ちゃんとあるからです。
その代表格が、BC州スーク学区(SD62)のBelmont Secondary School(ベルモント高校)のベースボール/ソフトボールアカデミーです。年$770、通年、毎日、そして初心者歓迎。カナダの野球アカデミーとしては、もっとも入口の広い部類に入ります。
先にお伝えすると、カナダの高校野球に甲子園のような全国大会はなく、州によって仕組みがまったく違います。全体像は野球で選ぶカナダ高校留学ガイドに、仕組みの解説はカナダの高校野球はどうなっている?にまとめました。この記事は、その中で「野球漬けではなく、野球のある高校生活を送りたい」層に合う一校を掘り下げた現地編です。
▶ 地域の全体像はBC州 高校留学の完全ガイドとバンクーバー島の高校留学(9学区の比較)、受け入れ元はスーク教育学区 留学生プログラムの紹介をご覧ください。
結論 ― どんな子に向くアカデミーか
一言でいえば、「野球は好き。でも、野球だけの留学にはしたくない」お子さんのためのアカデミーです。
- 初心者を歓迎している(公式に「あらゆるレベルの生徒」と明記)
- 通年・毎日。時間割の中に組み込まれた1ブロックとして、1年間ずっと続く
- 卒業単位2単位になる(体育1単位+野球/ソフトボール技能1単位)
- 年$770。BC州の野球アカデミーの中では最安級
- 男女どちらも参加でき、ソフトボールも併設されている
一方で、正直にお伝えしなければならないことがあります。このアカデミーは試合をしません。いえ、Belmontだけの話ではありません。BC州の学校は、そもそも野球の試合をしないのです。ここがBC州の野球留学を理解するうえで、いちばん大事な一点です。
その前に ― BC州には「学校の野球部」が存在しません
日本の感覚のまま来ると、必ずつまずくところなので、先に説明させてください。
BC州の学校スポーツ連盟(BC School Sports)は、野球を公認種目にしていません。サッカーもバスケットボールもバレーボールもあるのに、野球だけがない。つまりBC州には、学校対抗で試合をする「野球部」という存在自体がありません。
では、BC州の子どもたちはどこで野球をしているのか。地域のクラブです。
ここからBC州独特の構造が生まれます。
鍛える場=学校のアカデミー / 試合する場=地域のクラブ
この二段構えが、BC州の野球です。学校のアカデミーは「授業として技術を磨く場」であって、チームではありません。だからBelmontのアカデミーに入っても、試合には出られない。試合をしたければ、放課後や週末に、学校の外のクラブへ通うことになります。
これは欠点ではなく、設計の思想の違いです。学校は毎日きちんと鍛える。試合は地域が受け持つ。役割が分かれているぶん、それぞれが専門的になります。ただし——下の段(クラブ)に通う手段を先に考えておかないと、この二段構えは成立しません。その話は後ほど、費用と送迎の現実として正直に書きます。
なお、試合まで学校の中で完結させたいなら、州を変えるほうが早いです。アルバータ州には対外試合や遠征まで行うアカデミーがあり、オンタリオ州とマニトバ州には学校対抗の野球そのものがあります。
プログラムの中身 ― 通年・毎日・2単位
① 「シーズンだけ」ではなく、1年間ずっと
Belmontのアカデミーは、各学期に1ブロックが割り当てられ、毎日行われる通年プログラムです。授業として時間割に入っているので、「部活が終わったら野球も終わり」になりません。1年を通して、野球のある生活が続きます。
内容は日によってローテーションします。
- 屋内トレーニング
- フィールドでの実技
- ウェイトトレーニング
- 座学(スポーツ栄養学、バイオメカニクス=体の動きの科学)
「バットを振るだけ」ではなく、体のつくり方と、体の仕組みを学ぶ時間が組み込まれているのがカナダのアカデミーらしいところです。日本の部活で「根性で走る」時間だったものが、ここでは栄養学と生体力学の授業になっています。
② トレーニングが、そのまま2単位になる
アカデミーでの活動は、高校の卒業単位2単位として認められます。年間の体育1単位に加えて、野球/ソフトボールの技能で1単位。「好きなことをやっている時間が、卒業に必要な単位になる」——この仕組みは日本の高校にはありません。留学生にとっては、学業計画の面でも無駄がない設計です。
③ 初心者を、公式に歓迎している
ここがBelmont最大の特徴です。公式には「あらゆるレベルの生徒の、野球/ソフトボールと総合的な運動能力の向上を目指す」と書かれています。エリート選抜ではありません。
カナダの野球アカデミーは、多くが経験者・上級者向けです。私たちが調べた範囲でも、明確に初心者を受け入れていると公式に書いている学校は、そう多くありません。「日本で野球部だったけれど、レギュラーではなかった」「中学から始めたばかり」——そういうお子さんが、引け目なく入れる場所です。
そしてもうひとつ。プログラムの目標として掲げられているのは、うまい選手をつくることではなく、「より良い総合的なアスリート、リーダー、そして地域社会の一員を育てること」。この一文に、この学校の姿勢が出ていると思います。
④ ソフトボールも、女子も
このアカデミーは野球とソフトボールの併設で、公式に「男女どちらの生徒のためにも」と明記されています。日本では「野球は男子、ソフトボールは女子」と分かれがちですが、ここではその前提がありません。
なお、スーク学区ではソフトボールのアカデミーをEdward Milne Community Schoolでも実施しています(こちらは$788)。同じ学区の中に選択肢があるのは、留学先を決めるうえで安心材料です。
費用 ― 0の隣にある、もうひとつの財布
ここは、いちばん正直に書かなければならないところです。
アカデミーの費用
年$770(デポジット$300・返金不可)。BC州の野球アカデミーとしては最安級です。参考までに、同じBC州でもウエストバンクーバーのプログラムは約$4,250、アボッツフォードのYale高校は約$3,000(前期のみ)。Belmontは通年でこの金額ですから、時間あたりで見ると相当に軽い。
留学そのものの費用(2026-27年度・スーク学区)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 出願料 | $300 |
| 授業料 | $16,250 |
| ホームステイ | $12,600(月$1,260) |
| 医療保険 | $1,100 |
| プログラムサポート費 | $1,000 |
| 新入生オリエンテーション | $400 |
| 小計 | $31,650 |
| + アカデミー費 | +$770 |
| 合計の目安 | 約$32,420 |
プログラムサポート費$1,000には、ホームステイの手配とサポート、到着・出発時の送迎、スクールバス(利用できる場合)、カストディアン(後見人)、そして学区が運営する課外活動プログラムへの参加が含まれます。この「課外活動プログラムが標準で付いてくる」点は、スーク学区の地味に大きな長所です。
そして、書かなければならないこと
「年$770で野球留学ができます」と書いたら、それは嘘になります。
なぜなら、試合をするクラブは、まったく別の財布だからです。BC州の二段構えは、費用も二段だということです。次の章で、その中身を実名で書きます。
試合はどこで? ― ビクトリア圏のクラブと、その値段
Belmontがあるのは、ビクトリア市の西隣、ラングフォード(Langford)という街です。この地域で15歳前後の子が野球の試合をしようとすると、選択肢はおおよそ次のように階層化されています。
| 階層 | クラブの例 | 費用の目安 | 本拠 |
|---|---|---|---|
| 気軽に試合を楽しむ | BC Minor Bantam AA(15U AA・年40試合) | $700〜800 | Carnarvon/Layritz/Triangle/Gordon Head 各パーク |
| 一段上(AAA) | Victoria Seawolves(13AAA/15U AAA/18U AAA) | $2,500〜4,000 | Carnarvon Park |
| 州の最上位(BCPBL) | Victoria Mariners | 約$5,500 | Layritz Park/Henderson Park |
| 州の最上位(BCPBL) | Victoria Eagles | 約$6,500(遠征費込) | Lambrick Park |
※金額はいずれも目安で、年度により変わります。
この表から読み取っていただきたいことが、3つあります。
1つめ。現実的な最初の一歩は、いちばん上の行です。 BC Minor の Bantam AA なら$700〜800で、年40試合。日本の中学野球より試合数が多いくらいです。「試合がしたい」という願いは、ここで十分に叶います。
2つめ。BCPBL(州の最上位リーグ)は、1シーズンで留学の学費に匹敵します。 $5,500〜$6,500です。しかも実力での選抜があり、誰でも入れるものではありません。「BC州で本気の野球を」と気軽におすすめできる金額ではない、というのが私の正直な見方です。
3つめ。これがいちばん大事です。上位クラブの本拠地は、すべてビクトリア市街側にあります。 Belmontのあるラングフォードからは、街をひとつ挟むことになります。平日の夜、誰がどうやってそこまで通うのか。これを先に決めておかないと、二段構えは絵に描いた餅になります。
送迎について、はっきり書きます
ホストファミリーに毎週の送迎を期待することはできません。これはホームステイ契約の範囲外です。厚意で乗せてくださるご家庭もありますが、それは「してもらえたら幸運」であって、計画の前提にしてはいけません。
そして、学校外のクラブは、私たち留学エージェントと教育委員会のサポート範囲の外です。加入手続き、費用の支払い、保険、送迎——すべてご家庭の責任になります。これは冷たい線引きではなく、責任の所在を最初にはっきりさせておくことが、結局はお子さんを守るからです。
ですから私たちは、クラブでの試合を望むご家庭には、学校選びの段階から「通える場所か」を一緒に検証します。バスで行けるのか、有償の送迎サービスがあるのか、ホストファミリーの地域はどこか。順番が逆だと、渡航してから困ります。
出願と登録 ― ここが、いちばんの落とし穴です
これは、大切な実務の話です。
アカデミーへの登録は、学校への出願とはまったく別の手続きです。そして——
2026-2027年度のアカデミー、登録開始は2026年2月25日(水)午前8時。先着順で、定員に達し次第締め切られます。
条件付きの合格通知は、2026年4月〜6月に発行されます。デポジット$300は返金されません。
2027年9月に入学する留学生にとって、この日程は「学校が決まるより前」に来ます。留学の出願手続きを普通に進めていると、アカデミーの枠が先に埋まってしまう。「入学は決まったのに、野球のクラスには入れなかった」——これがいちばん避けたい結末です。
もうひとつ、確認しておくべきことがあります。スーク学区の留学生向け料金表には、追加費用の項目として「スポーツアカデミー費」がはっきり記載されています。つまり、留学生がアカデミーに参加することは制度として想定されている、と読み取れます。ここは私たちにとっても心強い材料でした。ただし、先着順の登録日程と留学生の出願スケジュールをどう噛み合わせるかは、学区に個別確認が必要です。ここは私たちが代わりに聞きます。
野球を続けるためにカナダへ行くなら、逆算して早く動く。それだけで結果が変わる領域です。
◆ 現地から、正直な現在地
私たちはバンクーバー島の9学区を実際に回っており、スーク学区もその一つです。ビクトリアの西側に広がる新興住宅地で、学校の施設が新しく、プログラムが充実しているのがこの学区の特徴です。
弊社からもベルモントのベースボールアカデミーに入る方が、毎年のようにいます。ほとんどの方にとって野球の位置付けは、「カナダでも野球やりたいから」「仲間・友達づくりの1つ」「英語習得の方が優先度は上」そして、ブリティッシュコロンビア州、ビクトリア周辺で留学がしたいという想いが強く、野球とのバランスをとってベルモントを選ばれています。ご自身のカナダ留学において野球の位置付けを最初に本人と確認するのがとても大切なポイントだと思います。
他の選択肢と比べると
Belmontが最適かどうかは、お子さんの「野球への本気度」で決まります。判断の材料として、他の道も並べておきます。
BC州の中で、もっと鍛えたい場合 ウエストバンクーバーのプログラム(約$4,250/年・8〜12年・上級者向け・教育委員会の紹介はこちら)や、アボッツフォードのYale高校(約$3,000・前期に約80回の高強度トレーニング・経験者向け)があります。ただしどちらも「鍛える場」であって、試合は同じくクラブです。BC州にいる限り、二段構えからは逃れられません。
試合まで学校でしたい場合は、州を変える アルバータ州のMonsignor McCoy高校($850・通年・気軽さでBelmontに近い)、St. Joseph高校($3,395・毎日84分+秋の対外試合)、全寮制のVauxhall Academy of Baseball(約$15,600・シーズン75試合以上・送迎問題ゼロ)。「送迎の心配をせずに試合をしたい」なら、アルバータのほうが構造的に向いています。
言い換えると、こうです。
- 温暖な気候と、初心者に開かれた入口と、費用の軽さ → Belmont(BC州)
- 試合と、送迎のいらなさ → アルバータ州
どちらが良いかではなく、何を優先するかです。
よくある質問(Belmont・野球編)
Q. 野球初心者でも入れますか? A. 入れます。公式に「あらゆるレベルの生徒」を対象としており、初心者を歓迎しています。カナダの野球アカデミーの多くが経験者向けである中で、これは数少ない例です。日本で野球部だったけれどレギュラーではなかった、というお子さんにこそ向いています。
Q. 試合はできますか? A. 学校ではできません。BC州には学校対抗の野球そのものが存在しないためです。試合は地域のクラブに加入して行います。ビクトリア圏なら、BC Minorの15U AA($700〜800)で年40試合ほどプレーできます。ただしクラブは私たちと教育委員会のサポート範囲外で、加入・費用・送迎はご家庭の責任になります。
Q. 費用は全部でいくらかかりますか? A. 2026-27年度のスーク学区の留学費用が$31,650(授業料・ホームステイ・保険等を含む)、これにアカデミー費$770が加わって約$32,420が目安です。クラブに入って試合をする場合は、さらに$700〜(最上位リーグなら$5,500〜)が別途必要になります。金額は年度で変わるため、最新の公式情報をもとに正確にお見積もりします。
Q. ホストファミリーは練習や試合に送ってくれますか? A. 基本的に頼れません。毎週の送迎はホームステイ契約の範囲外です。クラブに通うのであれば、公共交通・有償の送迎など、通う手段をあらかじめ設計しておく必要があります。私たちは学校選びの段階から、この点を一緒に検証します。
Q. いつまでに申し込めばいいですか? A. アカデミーの登録は2026年2月25日午前8時開始の先着順です。学校への出願とは別の手続きで、しかも学校が決まるより前に締め切られる可能性があります。野球を目的に留学されるなら、通常より早く動く必要があります。ご相談は早いほど選択肢が残ります。
Q. 女子でも参加できますか? ソフトボールはどうですか? A. どちらも大丈夫です。公式に男女両方を対象と明記しており、野球とソフトボールが併設されています。スーク学区ではEdward Milne Community Schoolでもソフトボールのアカデミーを実施しています($788)。
Q. アルバータ州の野球留学と、何が違いますか? A. いちばんの違いは「試合が学校の中にあるかどうか」です。アルバータには対外試合や遠征まで行うアカデミーがあり、送迎の問題が起きにくい。一方BC州は、鍛える場と試合する場が分かれています。そのかわりBCは冬が穏やかで、Belmontのように初心者に開かれた入口があります。お子さんの本気度と、ご家庭が送迎をどこまで設計できるかで決まります。
おわりに ― 「うまい子の野球」ではない場所
Belmont高校のベースボール/ソフトボールアカデミーは、プロを目指す場所ではありません。BCPBLのスカウトが並ぶ場所でもありません。
そのかわり、初心者が引け目なく入れて、1年間毎日続けられて、それが卒業単位になって、年$770で済む。「野球が好き」という気持ちを、留学生活の真ん中に置いたまま、無理なく続けられる場所です。
日本の部活で「レギュラーになれなかった」経験をしたお子さんに、私はときどきこう思います。その子は野球が下手だったのではなく、置かれた場所の入口が狭かっただけかもしれない、と。入口の広い場所に立てば、同じ子が違う顔をすることがあります。私たちはそういう場面を、何度か見てきました。
もちろん、ここが最適かどうかはお子さん次第です。学校名はあくまで「例」であり、ほかにも合う選択肢はあります。大事なのは学校を売り込むことではなく、お子さんに合う進路を一緒に探すことだと考えています。
「うちの子は野球が好きなんです。カナダで続けられますか?」——その一言から、一緒に考えさせてください。無料カウンセリングでお聞かせください。
参考(公式情報/2026年8月確認) ※費用・受け入れ条件は年度で変わります。最終判断の前に、必ず最新の公式情報をご確認ください。私たちがお手伝いします。
- Belmont Secondary School ベースボール/ソフトボールアカデミー:https://belmont.web.sd62.bc.ca/programs/belmont-academies/baseballsoftball-academy/
- スーク学区(SD62)アカデミー一覧・登録案内:https://www.sd62.bc.ca/programs-supports/academies
- スーク学区 2026-2027年度アカデミー費用表:https://www.sd62.bc.ca/sites/default/files/school-plans/Academy%20Fees%202026%20-%202027_0.pdf
- スーク学区 留学生プログラム 2026-27年度 費用表:https://www.sookeschoolsvictoria.com/
- BC School Sports 公認種目一覧(野球が含まれないことの確認):https://www.bcschoolsports.ca/parents/bcss-sanctioned-sports
- Victoria Eagles Baseball Club「12歳以上の野球の選び方」:https://www.victoriaeagles.com/where-to-play-ages-12
