「カナダの高校で、練習だけでなく試合もできる環境で野球を続けさせたい」——このご相談に、私が実例としてお見せできる学校のひとつが、アルバータ州レッドディアのSt. Joseph高校(Red Deer Catholic Regional Schools)のボールアカデミーです。弊社から実際に生徒を送り出してきた、斡旋実績のある学校でもあります。
先にお伝えすると、カナダの高校野球に甲子園のような全国大会はなく、州や形態によって「学校チームで試合する州」「練習型アカデミーの州」が分かれます。この全体像は野球で選ぶカナダ高校留学ガイドに、仕組みの解説はカナダの高校野球はどうなっている?にまとめてあります。この記事は、その中で「練習も試合もしたい」中間層にちょうど合うアルバータ州の一校を掘り下げた現地編です。
▶ 地域の様子はアルバータ州 高校留学の完全ガイドとレッドディアの街の紹介、受け入れ元の教育委員会はレッドディア・カトリック教育委員会の紹介をご覧ください。
結論 ― どんな子に向くアカデミーか
一言でいえば、「毎日鍛えて、秋には試合もして、データで自分の成長を確かめたい」経験者のためのアカデミーです。フルプログラムなら平日毎日84分のトレーニング枠が時間割に組み込まれ、体育・選択科目として年間10単位が付きます。秋には他のアカデミーとの対外試合(Fall Ball)があり、大学スカウトの前でプレーする機会(PBRスカウトデー年2回)まで用意されています。逆に、野球をこれから始めたい初心者向けの場ではありません。選考基準に「競技クラブへの現登録」が明記されているためです(後述)。
プログラムの中身 ― 毎日84分・年10単位・秋は対外試合
① 時間割に組み込まれた毎日のトレーニング(フルプログラム)
高校アカデミー(フルプログラム)は、ブロック1・2の84分授業として毎日行われます(男子硬式野球。ソフトボールはブロック4)。週4日は「ウォームアップ/スプリント・可動域 → ウェイトルームでの筋力トレーニング → フィールドハウスでの技術練習」という流れで、内野・外野・バッテリーのポジション別グループに分かれて鍛えます。5日目はメンタルトレーニング・栄養学などの座学+補強にあてられ、天候が許せば屋外練習も行います。
単位は年間10単位。2学期に体育(PE 10/20/30)、1学期にCTS(キャリア・技術系)の単位が付く設計で、「野球の練習が、そのまま卒業単位になる」形です。
② 秋の対外試合と、大学への道
アカデミーの授業枠の外にも機会があります。硬式野球はFall Ball(他のアカデミーチームとの対外試合)、大学見学ツアー、そしてPBR(Prep Baseball Report)のチーム・スカウトデーが年2回。ソフトボール側もFall Ball(SAIT・カルガリー大学・マウントロイヤル大学との試合)と大学ツアーがあります。学校の公式サイトには卒業生の大学進学(カレッジ・コミットメント)の一覧ページもあり、「高校の先」まで見据えた運営です。
③ データで測る成長 ― 学期ごとのアスリートプロファイル
このアカデミーの特徴のひとつが測定文化です。打球速度(Exit Velocity)・送球速度・走塁スピードを計測し、学期ごとに「アスリートプロファイル」として本人と家庭に共有されます。数値に加えて、目標設定とコーチのコメントが付きます。Rapsodo(弾道測定機器)を使った投打の分析を担当する専門コーチもいて、感覚だけでなくデータで成長を確かめられる環境です。
④ コーチ陣 ― MLB球団スカウトと元カナダ代表が教える
コーチ陣の厚さは、正直、地方都市の高校としては驚くほどです。
- Jason Chatwood(主任コーチ):2018年のアカデミー開設時からの指導者。NCAA Division 1のゴンザガ大学でプレーし、現在はアリゾナ・ダイヤモンドバックスのアソシエイトスカウト、地元サマーリーグ球団Sylvan Lake Gullsのヘッドコーチ兼GMも務めます。
- Scott Murray(アカデミーディレクター):地元名門クラブRed Deer Riggersで全国選手権優勝・州タイトル10回を経験した、レッドディア野球界の中心人物。
- Dwayne Lalor:1985・86年のカナダ代表。NCAA D1のワシントン州立大学でチーム最高打者・オールスター2ndチーム選出の実績を持ち、ジュニアカナダ代表のコーチも歴任。
- ほかに、NCAA経験者でNSCA-CSCS(筋力・コンディショニング指格)を持つ専任コーチ、San Diego State大でD1経験を積んだRapsodo担当のドライブライン専門コーチ、そしてソフトボール側にはNJCAA一部リーグのオールアメリカン&NCAA D1(Belmont大学)出身の女性コーチが付きます。
「MLB球団のスカウトが日常的にグラウンドにいる高校」は、日本ではまず考えられない環境だと思います。
入り方 ― 選考基準を正直に
入学すれば誰でも入れるわけではありません。学校が公表している受け入れ基準は次のとおりです。
- 競技レベルの野球/ソフトボール協会(クラブ)に現在登録していること
- アカデミー指導陣による技能とコーチャビリティ(指導の受け入れ姿勢)の評価
- 学校コミュニティへの貢献と「文武両道の生徒アスリート」であることへのコミットメント
- カトリック校として、信仰と向き合う姿勢への理解(信者である必要はありませんが、宗教の授業やミサを含む学校文化を尊重できること)
つまり、日本で硬式・軟式のクラブや部活でしっかりプレーしてきた経験者が対象です。学校側も「私たちはまず学業のプログラムであり、出席を重んじる学校です」と明言しており、練習漬けの野球予備校ではなく、あくまで「学校生活の中の本格野球」です。
留学生は、Red Deer Catholic Regional Schools(RDCRS)の国際生プログラムを通して出願・在籍します。アカデミーへの受け入れ可否・その年の枠は年度で変わるため、「うちの子の野球歴で入れるか」は私たちがRDCRSに個別確認したうえでご案内します。
費用の考え方 ― 「学費の外側」を正直に
2026-27年度のアカデミー費は、学校の公式資料で次のように示されています。
- フルプログラム:$3,395/年(宿泊を伴う遠征・Fall Ball・大学ツアー込み。申込金$750は返金不可)
- パーシャルプログラム:$1,000/年(週3回40分・技術練習のみ・Fall Ballなし・6単位。申込金$250は返金不可)
ただし、これはアカデミー費だけの話です。留学生の場合はRDCRSの国際生としての学費とホームステイ費が別途かかります(金額は年度で変わるため、最新の公式情報でお見積もりします)。「野球にかかる費用は学費の外側」——ここを最初に押さえておくと、あとで慌てません。
なお、費用は毎年動くもの、とお考えください。
◆ 現地からの実例(弊社の斡旋実績校)
St. Joseph高校は、弊社が実際に生徒を送り出してきた学校でベースボールアカデミーの経験者もいます。日本でも中学から野球をしていた高校1年生の男の子が、11年生(高校2年生)からレッドディア・ファルコンズのベースボールアカデミーに参加しました。ちょうど私が現地視察をした際に彼がベースボールアカデミーで練習をしている様子を見てきました。彼の性格や英語力もありますが、私が驚いたのは、彼がチームの中にすっかり溶け込んでいたこと。留学生で野球をする学生は少ないのでチームのメンバーは彼以外は全員現地の学生です。その仲間と毎日2時間弱、一緒にトレーニングをします。野球だけではなく英語でのコミュニケーションにもすっかり馴染んでいました。チームメイトと、楽しそうに野球をする姿を見てこのアカデミーを紹介できたと思いました。普段の練習だけでなく、試合遠征もあるので、カナダの「高校野球」を経験できて楽しいですと話してくれました。
実際に送り出しているからこそ分かる「実際のところ」を、いちばん正直にお伝えできるのが、私たちの強みです。
レッドディアという街
レッドディアは、カルガリーとエドモントンのほぼ中間に位置するアルバータ州第3の都市圏です。大都市の慌ただしさがなく、日本人留学生もまだ多くありません。Red Deer Riggersの全国優勝の歴史が示すとおり、街の規模に対して野球文化が濃いのもレッドディアらしさです。学業と野球に集中する留学には、ちょうどよいサイズの街だと感じています。
→ 街の暮らし・気候・教育委員会の全体像はレッドディアの街の紹介にまとめています。
よくある質問(レッドディア・野球編)
Q. 野球初心者でも入れますか? A. このアカデミーは、競技クラブへの現登録が受け入れ基準になっており、初心者向けではありません。「これから始めたい」お子さんには、初心者を受け入れる別の選択肢(例:BC州の一部アカデミー)を一緒に探します。
Q. 女子でも参加できますか? A. できます。このアカデミーは硬式野球とソフトボールの両方を運営しており、ソフトボール側にはNCAA Division 1出身の女性コーチが付き、大学(SAIT・カルガリー大・マウントロイヤル大)との試合機会もあります。
Q. カトリックの学校ですが、信者でなくても大丈夫ですか? A. 大丈夫です。ただし宗教の授業や学校行事を含む「カトリック校の文化を尊重する姿勢」は求められます。受け入れ基準にも信仰と向き合う姿勢への理解が明記されています。
Q. 試合はどのくらいできますか? A. フルプログラムの生徒は、秋に他のアカデミーチームとのFall Ballがあります。加えて春〜夏は地域のクラブでプレーするのがカナダの標準的な形です。「学校対抗リーグで年間を通して試合」という州(オンタリオ・マニトバ)とは仕組みが違う点は、仕組みの解説記事をご覧ください。
Q. 費用は総額でどのくらいですか? A. アカデミー費$3,395(フル)に、RDCRSの国際生学費とホームステイ費が加わります。金額は年度で変わるため、最新の公式情報をもとに正確にお見積もりします。
おわりに ― 「練習も試合も」の真ん中にある実例
St. Joseph高校のボールアカデミーは、「本気で鍛えたい。試合もしたい。でも野球漬けの全寮制までは求めていない」——その真ん中の願いに応える、私が自信を持ってお見せできる実例です。とはいえ、ここが最適かどうかは、お子さんの野球歴・目標・ご家庭の方針によります。学校名は「例」であり、ほかにも合う選択肢はあります。
「うちの子は野球を続けたい。レッドディアは合いますか?」——実際にこの学校へ生徒を送ってきた私たちが、州・学校・クラブをセットで一緒に探します。無料カウンセリングでお聞かせください。
参考(公式情報/2026年7月確認)
- St. Joseph High School Ball Academy:https://www.stjosephhigh.ca/ball-academy2
- SJHS Falcon Ball Academy Open House資料(2026-27年度・学校配布)
- Red Deer Catholic Regional Schools:https://www.rdcrs.ca/
