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カナダの高校の音楽はどうなっている? ― 全国大会・RCM検定・吹奏楽を現地から解説

水谷通孝

カナダ在住・カナダ高校留学エージェント歴20年(2006年創業)。2025年にカナダへ移住し、自身の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

「うちの子は吹奏楽(合唱/ピアノ)を続けています。カナダの高校でも音楽を続けられますか? 大会や発表の場はあるのでしょうか?」——音楽が好きなお子さんのご家庭から、よくいただく質問です。この記事は、学校選びの前に知っておきたい**カナダの高校の音楽の「仕組み」**を、現地に暮らす立場から整理したものです。

▶ 「音楽を軸にどう留学をプランするか」「どんな学校・プログラムがあるか」を知りたい方は、音楽で選ぶカナダ高校留学ガイドへどうぞ。この記事はその土台となる「仕組みの解説」です。

まず結論 ― スポーツとは”大会の考え方”がまるで違う

はじめに、いちばん大事な違いをお伝えします。カナダの高校の音楽には、日本のコンクールのような「勝ち抜き式の全国大会」はありません。 全国規模の舞台はありますが、その性格が日本とはまったく違うのです。

カナダの音楽の舞台は、「勝ち負け」ではなく「講評(アジュディケーション)」で成り立っています。演奏を他校と対戦させて勝ち上がるのではなく、専門の審査員が一組ずつ演奏を聴いて、点数と書面の講評、その場でのレッスン(クリニック)を返す——つまり「競わせる」より「育てる」ための場なのです。たとえば地域のKiwanis Music Festivalでは、基準点に達すればPlatinum、達しなければ賞なし。極端に言えば、参加者全員がPlatinumになることもあり得ます。これは「他人に勝つ」より「自分の基準を上げる」文化です。

そのうえで、全国につながる舞台もちゃんとあります。ひとつはMusicFest Canada。吹奏楽・ジャズ・弦楽オーケストラ・合唱などが、地域のフェスティバルでの評価を経て招待制で全国の舞台に集います。もうひとつはFCMF(カナダ音楽祭連盟)の、地域 → 州 → 全国という三層の仕組みです。いずれも、勝ち抜きトーナメントではなく、審査員の評価と推薦で上へつながっていきます。

音楽ができる「4つの場」

カナダの高校で音楽に取り組む場所は、大きく4つに分かれます。

ひとつめは学校の授業・部活。吹奏楽(Concert Band)、ジャズバンド、弦楽オーケストラ、合唱、ギター、そして作曲・音楽制作まで、正式な選択科目として用意されています。ふたつめがRCM検定(次章で詳しく)。みっつめが地域・州・全国のフェスティバル(前章の講評文化の舞台)。よっつめが学校の外のユースオーケストラや音楽院——本気で上を目指すための場です。

この中でカナダらしいのは、学校の音楽と、RCMという全国共通の検定が、しっかり結びついていることです。ここが日本と大きく違い、留学生にとっての大きな魅力になります。

RCM検定 ― 「見える成果」が、そのまま高校の単位にもなる

カナダの音楽教育の背骨が、RCM(Royal Conservatory of Music/王立音楽院)の検定制度です。ピアノ・声楽・弦・管・ギターなど幅広い楽器で、Preparatory から Level 1〜10、その上の ARCT(ディプロマ)まで、段階的に級を取得していきます。日本の音楽検定に近い感覚ですが、カナダでの重みが違います。

いちばん大きいのは、RCMの級が、高校の単位に換算されることです。州によって基準は違いますが、たとえばLevel 8の実技+理論に合格すると、12年生(高校3年相当)の音楽の単位として認められます(BC・オンタリオ・アルバータなど各州の教育省が正式に定めています)。「好きな楽器を続けて級を取ったら、それが高校の卒業単位にもなる」——これは、音楽を続けたいお子さんにとって、とても分かりやすい”見える成果”です。

そして留学生にうれしいのが、RCMの受検には年齢・国籍・居住地の制限がないことです。誰でも、どの級からでも受けられます。現地の高校に在籍していれば、前述の単位換算も受けられます。つまり留学生でも、日本で積み上げてきた演奏の力を、カナダで級と単位という形に変えていけるのです。

学校の中の音楽 ― 吹奏楽が中心。初心者も入れる

カナダの高校の音楽の中心は、吹奏楽(Concert Band)です。これに加えて、ジャズバンド、弦楽オーケストラ、合唱(Concert Choir/Chamber Choir/ボーカルジャズ)、ギター、作曲・音楽制作といった科目が、州のカリキュラムに正式に位置づけられています。

大切なのは、一般のバンド・合唱・ギターの授業は、前提となる経験を求めない=初心者でも入れることです(BCやオンタリオのカリキュラムでも、これらの入門クラスに受講条件はありません)。一方で、学校のトップジャズバンドや室内合唱団などの”選抜アンサンブル”はオーディション制のことがあります。「まずは楽しみたい」お子さんにも、「上手な仲間と本気で」というお子さんにも、それぞれの入口が用意されている、と考えてください。

留学生にとって、音楽がいちばん参加しやすい理由

ここは、スポーツと比べるとよく分かります。スポーツでは、州の学校対抗に出るための在籍要件があったり、サッカーのクラブではFIFAの未成年移籍手続きが必要だったりと、留学生には手続きの壁がありました。

音楽には、こうした出場資格や移籍の壁がありません。 現地の高校に入って音楽の授業をとれば、その日から演奏に加われます。RCM検定は誰でも受けられ、地域のフェスティバルは”育てる”講評文化なので、シーズンの途中から参加しても意味があります。言葉がまだ不安なうちから、音楽は「一緒に演奏する」だけで仲間ができる——留学の入り口として、これほど心強い軸はありません。

ただし正直にお伝えすると、選抜アンサンブルや、学校の外の高いレベルの団体にはオーディションや条件があります。 たとえばカナダ最高峰の訓練オケ(NYO Canada)は、カナダ在住・在学が前提で、留学生は個別の問い合わせが必要です。「どこまで本気か」に応じて、届く場所が変わる点は、最初に確かめておきたいところです。

本気で上を目指すなら

将来プロや音楽大学を見据えるお子さんのために、上への道筋も共有します。RCMの上位級からARCT(ディプロマ)へ進む道、地域のユースオーケストラ、MusicFest Canadaの全国選抜アンサンブル(オーディション)、そして大学の音楽学部(オーディション入学)——これらが、高校での演奏や、RCM級・IB Music・AP Music Theoryといった学びの先に続いています。カナダの音楽は、「初心者の入口」から「プロを目指す階段」まで、一本の道でつながっているのが特徴です。

まとめ ― 「見える成果」と「参加しやすさ」が音楽の強み

カナダの高校の音楽は、勝ち抜き式の全国大会こそないものの、講評で育てる豊かな舞台があり、RCM検定という”級と単位になる見える成果”があり、そして何より留学生がいちばん参加しやすい軸です。まずは「お子さんにとって音楽が楽しみなのか、本気なのか」を軸に、学校と地域を選んでいきましょう。

具体的な学校名・プログラム・地域の選び方は、音楽で選ぶカナダ高校留学ガイドにまとめています。ほかの「やりたいこと」から留学先を考えたい方は、やりたいことで選ぶカナダ高校留学もご覧ください。

よくある質問

Q. カナダの高校の音楽に、全国大会(コンクール)はありますか? A. 勝ち抜き式の全国大会はありません。MusicFest CanadaやFCMFという全国につながる舞台はありますが、いずれも他校との対戦ではなく、審査員が演奏を評価し講評する「育てる」文化です。地域のフェスティバルも、基準に対する採点とフィードバックが中心です。

Q. RCM検定とは何ですか? 高校の単位になるというのは本当ですか? A. カナダの王立音楽院による音楽検定で、Level 1〜10とARCTまで段階があります。本当です。州によって基準は違いますが、たとえばLevel 8の実技+理論に合格すると12年生の音楽単位として認められます。現地校に在籍していれば留学生も単位換算を受けられます。

Q. 留学生でもRCM検定を受けられますか? A. 受けられます。RCMの受検に年齢・国籍・居住地の制限はありません。どの級からでも登録できます。

Q. 初心者でも学校の音楽に入れますか? A. 入れます。一般の吹奏楽・合唱・ギターの授業は前提となる経験を求めません。ただし学校のトップジャズバンドや室内合唱団などの選抜アンサンブルは、オーディションがあることがあります。

Q. 音楽はスポーツより留学生が参加しやすいのですか? A. はい。音楽にはスポーツのような出場資格や移籍の手続きがなく、授業をとればその日から演奏に加われます。RCM検定も誰でも受けられます。ただし選抜アンサンブルや学校外の高レベルの団体にはオーディションや在住要件がある場合があります。

Q. 吹奏楽以外に、どんな音楽ができますか? A. ジャズバンド、弦楽オーケストラ、合唱、ギター、作曲・音楽制作などが正式な選択科目としてあります。学校によって強い分野が異なるので、お子さんのやりたい音楽に合う学校を選ぶのが大切です。


参考(公的機関・公式ページ/2026年7月確認) ※本記事の構造は、統括団体・王立音楽院・各州教育省・学校の公式情報で確認しています。級や単位換算の基準は年度・州で変わるため、成約前にご確認ください。

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