留学アドバイス

カナダ高校卒業の最大の壁「12年生の英語」を、49歳の私が受けてきました

水谷通孝

カナダ在住・カナダ高校留学エージェント歴20年(2006年創業)。2025年にカナダへ移住し、自身の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

カナダの高校を卒業しようとする日本人の子どもにとって、いちばんの関門は何か。20年この仕事をしてきて、答えははっきりしています。Grade 12の英語です。(高校3年生の英語)

どの州でも必ず履修しなければならない必修科目で、これをクリアしないと卒業できません。そして、日本の子どもがいちばん苦しむ科目でもあります。

私はその科目を、自分で受けてきました。

2025年8月にウィニペグへ移住し、9月から翌年1月までの5ヶ月間、English 40S(Grade 12の英語)を1科目だけ、毎日通って受講しました。そして州の統一試験も、普通の高校生とまったく同じ日に受けました。結果は85%を超えていました。

49歳での受講です。この記事は、その5ヶ月の記録です。


なぜ、49歳で高校の授業を受けたのか

結論:お客様のお子さんが必ず通る壁を、自分が一度も通っていなかったからです。

私自身に語学留学の経験はありますし、カナダの教育に長く関わってきました。それでも、Grade 12の英語が実際どれくらい難しくて、どんな英語力が必要で、何をやるのか——ここがずっと分からないままだったのです。

「大変らしいです」と伝えることはできても、「こういう力が要ります」とは言い切れない。20年やってきて、そこが引っかかっていました。

2025年にカナダへ移住することが決まったとき、これは受けるしかないと思いました。カナダの高校をもっと知る、カナダの教育をもっと知る——それが移住の目的でもあったからです。


どこで、誰と学んだか

通ったのは、ウィニペグのダウンタウンにある Winnipeg Adult Education Centre です。社会人向けの高校で、立派な校舎があり、朝から夕方まで授業が行われています。私が学生の斡旋でパートナーとしてお付き合いしているウィニペグ教育委員会の管轄下にある学校の一つで、自分で手続きをして、自分を登録して通いました。

同級生には、こういう方たちがいました。

  • ウクライナから戦争を逃れてカナダに来られた方
  • 移民として来られ、高校卒業資格を持っていない方(ニューカマーと呼ばれます)
  • カナダのファーストネーション(先住民)で、高校を卒業しないまま大人になった方

それぞれが、ここで州の卒業資格を取り、カレッジや大学へ進み、仕事を得るために学んでいます。

そして大事なのは、ここで開講されている科目は、マニトバ州の普通の高校生が通う高校と同じカリキュラムだということです。同じでなければ、州の定める卒業資格になりませんから。私が受けたのは、お子さんたちが受けるのと同じ科目です。


州統一試験を、高校生と同じ日に受けました

重要:マニトバ州とアルバータ州には、卒業のために避けて通れない州統一試験(Provincial Exam)があります。

留学を検討されているご家庭に、まず知っておいていただきたい事実です。

  • マニトバ州:Grade 12の英語と数学が対象
  • アルバータ州:英語・数学・社会・理科(物理・化学・生物)が対象

つまりアルバータ州で大学進学を目指すお子さんの場合、最大で6科目の州統一試験を受けることになります。ここは州選びの際に意外と知られていない論点です。

そして私が受けた州試験は、同じ日に、州内の普通の高校生たちが同時に受けているものでした。当たり前のことですが、とてもきちんとしています。正直に申し上げると、少し緊張しました。私たち成人の受験は4日間に分けて実施されましたが、内容は同じです。

結果は85%超。私は高校生のとき、そんな成績を取れるような学生ではありませんでした。おそらく人生でいちばん良い成績です。


分かったこと① 教科書がありません

最初の驚きがこれでした。

カナダの高校の英語には、教科書がありません。

その代わり、先生がたくさんのプリントをくれます。教材になるのは、実際に世に出ている文章です。雑誌の切り抜き、書籍からの抜粋、新聞や雑誌の記事。州のカリキュラムでカバーすべき内容が決まっていて、それを教えるために、先生がいろいろなところから本物の文章を集めてくるのです。

読み方の指導も特徴的です。いきなり読ませるのではなく、まず「タイトルと見出しと写真を見て、これはどんな記事だと思いますか」と問われる。そこから本文に入っていきます。

プリントは本当にどんどん溜まります。現地に着いたら、まずバインダーを1冊買ってください。 文房具屋でも売っています。ただ正直に申し上げると、カナダで買えるペンの質は日本と比べるとかなり落ちます。日本の文房具は本当に優秀なので、使い慣れたものを持ってくることをおすすめします。

なお、課題や連絡は Google Classroom で管理されていました(ウィニペグ教育委員会の場合)。学校から自分専用のメールアドレスとパスワードが発行され、ログインすると受講科目が並んでいます。科目を開くと、先生が掲示板のように「今日やったのはここ」「授業で見た動画はこれ」と書き込み、課題も貼られている。日本の「教科書とノート」とは、学習の形そのものが違います。


分かったこと② 核心は「クリティカルシンキング」です

結論:この科目でいちばん大事な概念は、クリティカルシンキング(批判的思考)です。

授業でいちばん多く練習したのは、この作業でした。

文章を読んで「メインアイデア(結局この著者が言いたいこと)」を見つけ、それを自分の言葉で1文にする。

そして、そのメインアイデアを著者はどうやって支えているのか(何を根拠にしているのか)を取り出す。さらに、書かれていることが事実なのか意見なのかを区別し、意見であればそれは何に基づく意見なのかを見極める。

メインアイデアは、タイトルにそのまま書いてあることもあります。しかしどこにも書かれていないことも多い。書かれていなくても、読めば分かる——そういう力が問われます。

そしてこれは、文章だけの話ではありません。動画も、映画も、ドラマも、誰かのスピーチもプレゼンも同じです。「結局これは何なのか」「それは自分にとってどういう意味を持つのか」「それを踏まえて自分は何をするのがベストなのか」。この考え方を、繰り返し訓練します。

ここで、私にとって決定的だった事実を申し上げます。

もしこれが知識や暗記力を問う授業だったら、私は絶対にこの成績は取れませんでした。日本の国語の授業だったら、無理だったと思います。

85%を超えられたのは、暗記量ではなく、考え方を問う科目だったからです。

これは、お子さんの成績を心配されているご家庭にとって、希望のある事実だと思っています。問われているのは、日本の受験で鍛えてきた種類の力とは違うものです。日本で成績が振るわない子にもチャンスがあり、逆に日本で成績優秀な子ほど油断できない。そういう科目です。


分かったこと③ 5〜8ページを読み切る力が、前提です

結論:Grade 12の英語で必要なリーディング力を、具体的に言います。5〜8ページ程度の文章に向き合って、集中して読み切れる力です。

抽象的に「英語力を上げましょう」ではなく、数字でお伝えします。実際に授業で扱ったのは、多くて8ページ程度の記事でした。これを集中して読み切れるかどうか。

この経験がないままGrade 11をなんとか越えて、Grade 12でいきなり長い文章を渡され「どう思う?」と聞かれたら、ついていけなくなります。 単語の意味を調べているうちに授業が終わってしまう。実際、そうなってしまう子がいます。

読む素材については、オピニオン記事を載せているサイトや、BBCのような報道機関のサイトがおすすめです。興味の持てるテーマから始めてください。

そして、本を読むこと。私自身、カナダに来てからの半年で相当な冊数を読みました。一緒にウィニペグに住んで現地の高校に通っている長男も、もともと小学生の頃から読書が好きな子でしたが、いまも読み続けています。「言語を学ぶには読書だ」と、私が洗脳のように言い続けているせいかもしれません。

スマートフォンの影響で集中力が続きにくい時代だとよく言われます。だからこそ、5ページでも6ページでもいい。そこから始めて、少しずつレベルを上げていってください。


分かったこと④ ライティングは、書くしかありません

結論:読んで掴んだことを自分の文章にする力が要ります。そしてこれも、一朝一夕には身につきません。

いま世の中には、「3日で」「1週間で」「30日で」という英語教材があふれています。特効薬のような触れ込みです。でも私の実感として、リーディングもライティングも、根気と時間がかかります。

ただ、時間をかけて身につけたスキルは、なかなか失われません。逆に1週間や2週間で身につけたものは、離れたらすぐ忘れていきます。

具体的にやってほしいことは、これだけです。

今日思ったこと、今日あった出来事を、箇条書きでいいから書く。

小説を書けとは言いません。エッセイを書けとも申しません。「今日はあの先生がこんなことを言っていた」「今日は友達の誰々とあそこに行って、こんなことをした」「私はこれを買った」——短い文の羅列で構いません。ページが真っ黒になるまで書く。行動と合わせて感じたこと、そしてこの先に繋げたいことなどを書くともっと良いです。

なぜかというと、書いたものがあれば、直せるからです。

これは本当に大事な点です。優しいホストマザーも、親身な先生も、同級生も、アウトプットがなければ直しようがありません。 何かを出して初めて、「ここはこう書くといいよ」と言ってもらえます。私はジャーナル(日記)をおすすめしていますし、自分も何年も英語で書き続けています。日本での大学進学の為にも留学生にお勧めをしている留学ログについてはこちらの記事をご覧ください。

そして、日本の方がいちばん重視されがちなスピーキングについて。私の長年の経験では、スピーキングは比較的あとからついてきます。 リーディングとライティングがしっかりできれば、必ず話せるようになります。順番を間違えないでください。


留学が進むほど、英語力の差は残酷に効いてきます

正直に申し上げます。

留学は、進むにつれてやることが難しくなります。英語力が伸びていない子は、後半が本当にやっつけ仕事になってしまいます。 単位を取るためだけに課題を出す、という状態です。

これだけの投資をして行かれるのに、それはあまりにもったいない。

そして、いま準備の時間があるのは、渡航前のお子さんです。 この記事をご覧になっているのが、中学3年生や高校1年生のご家庭であれば、まだ時間があります。時間をかけて身につけたスキルは、一生ものです。


正直な但し書き

この経験を過大に受け取っていただきたくないので、限界も書いておきます。

私が通ったのは成人教育センターです。生徒層も、授業の進み方も、10代が通う通常の高校とは違います。そして私は大人で、20年この分野にいて、英語の学習歴も長い。その条件で85%だった、という事実として読んでください。10代のお子さんが同じ点を取れるという話ではありません。

それでも——皆さんのお子さんが必ず通る科目を、私も州の統一試験まで含めて通りました。 そのことが、私のアドバイスの根拠になっていると思っています。


最後に、ひとつだけ皮肉なことを

クリティカルシンキングが身につくと、人はあまり傷つかなくなります。相手の言っていることの筋が通っていないとき、それが見えるようになるからです。理に適った考え方ができるようになり、伝え方も上手になります。本当に価値のあるスキルです。

ただ——これをしっかり身につけて帰った子ほど、日本の社会で苦しむかもしれない。 これは留学エージェントとしての、正直なジレンマです。日本の社会では一般的な、「上司が言っているから」「昔からこうだから」「日本ではこうだから」という結論の付け方が、受け入れにくくなるかもしれません。

それでも私は、身につける価値のあるスキルだと思っています。世界の人たちと渡り合うとき、これがなければ話が噛み合わないからです。

だから、頑張ってほしい。Grade 12の英語は、単位のための壁ではなく、一生使えるものを手に入れる機会です。


よくあるご質問

Q. Grade 12の英語は、どれくらい難しいのですか? A. 単語や文法の難しさというより、5〜8ページの文章を読んで要点を掴み、自分の言葉で説明する力が問われます。暗記型の科目ではないため、日本の国語が得意でなかった子にもチャンスがあり、逆に暗記で成績を取ってきた子は苦戦することがあります。

Q. 州の統一試験はどの州にありますか? A. マニトバ州は英語と数学、アルバータ州は英語・数学・社会・理科(物理・化学・生物)が対象です。アルバータ州で大学進学を目指す場合、最大で6科目を受験することになります。BC州とオンタリオ州には教科別の州統一試験がありません(評価のしくみの全体像は別記事にまとめました)。

Q. 渡航前に、英語のどのスキルを優先すべきですか? A. リーディングとライティングです。まず5ページ程度の記事を集中して読み切る練習、そして日記のような短い文章を毎日書く習慣。この2つが最優先です。スピーキングは、この2つができるようになると後からついてきます。

Q. 高校で教科書は使わないのですか? A. 英語の科目に決まった教科書はなく、先生が集めてきた実際の記事や書籍の抜粋が教材になります。プリントが大量に配られるので、バインダーが必需品です。課題や連絡はGoogle Classroomなどオンラインで管理されるのが一般的です。

Q. 英語力が足りないまま渡航すると、どうなりますか? A. ESL(英語サポート)の段階が長引き、大学進学用のアカデミック科目に乗るのが遅れます。そして留学は後半ほど内容が難しくなるため、単位を取るためだけの学習になってしまいがちです。渡航前の準備は、現地で楽をするためではなく、選択肢を確保するためのものです。


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この記事の情報について 本記事は2025年9月〜2026年1月の受講体験に基づく個人の記録です。カリキュラムや州統一試験の実施内容は年度により変更されることがあります。制度の詳細は各州・各学校の最新情報をご確認ください。

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カナダ在住・カナダ高校留学エージェント歴20年(2006年創業)。2025年にカナダへ移住し、自身の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

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