カナダ大学進学(高校留学のその先)

NSISP Pathways ― カナダの大学に「入学保証」つき、現地学生と同じ学費で進む方法

水谷通孝

カナダ在住・カナダ高校留学エージェント歴20年(2006年創業)。2025年にカナダへ移住し、自身の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

こんにちは。キャタリストカナダの水谷です。

先日バンクーバーで開かれた留学関連のカンファレンスで、ノバスコシア州の留学プログラム(NSISP)の代表と話す機会がありました。そこで聞いた制度が、カナダ高校留学を検討されているご家庭にとって、あまりにも大きな意味を持つ内容だったので、詳しくご紹介します。

NSISPが「Pathways Program」と呼んでいる制度です。NSISP自身が「カナダで唯一の仕組み」と説明しており、実際に卒業生の30%以上が、そのままノバスコシア州内の大学・カレッジに進学しています。

結論 ― 保証されるのは「学費」だけではありません。3つあります

多くの紹介記事は「学費が安くなる制度」としてこの制度を書いています。私も以前はそう説明していました。

でも、NSISPの公式資料を読み直すと、保証されているのは3つです。

① 入学が保証されます。 必要科目の平均が**70%**あれば、提携する大学への入学が保証されます。出願して落ちる、という不確実性がなくなります。

② 英語試験が免除されます。 ノバスコシア州のGrade 12アカデミック英語で70%以上を取っていれば、大学出願時の英語能力試験(IELTSやTOEFL)が免除されます。

③ 現地のカナダ人学生と同じ授業料になります。 留学生料金ではなく、国内学生の料金です。学部4年間、適用されます。

正直に言えば、①のインパクトは③に劣りません。「行けるかどうかわからない」が「70%取れば行ける」に変わるのは、進路設計そのものを変える話だからです。

※各制度には学校ごとの条件差があります。詳しくは後述します。

① 入学保証 ― 「70%」という具体的な基準

カナダの大学に、日本のような一発勝負の入学試験はありません。高校の成績で合否が決まります。この仕組みはカナダの高校からカナダの大学・カレッジへで詳しく説明しています。

そのうえで、ノバスコシア州のPathways Programは、さらに一歩踏み込んでいます。必要科目の平均70%という明確な基準を示し、それを満たせば入学を保証すると明言しているのです。

これがどれだけ特別か。通常、カナダの大学進学は「この成績なら、たぶん大丈夫でしょう」という見込みで進めます。人気校・人気学部なら、成績が足りていても不合格はあり得ます。その不確実性が、この制度では消えます。

Grade 11・12の成績づくりがそのまま進学の確約につながる。目標が数字ではっきりしているというのは、お子さんにとっても大きな支えになります。

※学校・学部により入学基準や奨学金の要件は異なります。特定の学部を目指す場合は、個別に確認が必要です。

② 英語試験の免除 ― IELTS・TOEFLを受けずに出願できる

留学生がカナダの大学に出願する際、通常はIELTSやTOEFLのスコア提出が必要です。対策にも受験にも、時間とお金がかかります。

Pathways Programでは、ノバスコシア州のGrade 12アカデミック英語で70%以上を取っていれば、この英語能力試験が免除されます。

つまり、高校の授業を真面目に受けて成績を取ることが、そのまま英語要件のクリアになります。受験対策を別立てでやる必要がありません。高校生活を犠牲にせずに済む、という意味でも価値があります。

③ 現地学生と同じ授業料 ― 4年間でいくら違うのか

ここが最も金額のインパクトが大きい部分です。実額で見ていきましょう。

例としてダルハウジー大学(Dalhousie University)を挙げます。ハリファックスにあるカナダの名門校で、バンクーバーなど西部からわざわざ進学してくる学生も珍しくない大学です。

年間の授業料(目安)4年間
留学生料金約35,000カナダドル約140,000カナダドル
Pathways適用後(現地学生料金)1万カナダドルを下回る水準約40,000カナダドル
差額約25,000カナダドル約100,000カナダドル

1カナダドル110円で換算すると、4年間でおよそ1,100万円の差になります。留学生として通えば学費だけで約1,500万円のところ、Pathways適用なら約400万円で卒業まで行ける計算です。

4年間で400万円という学費なら、生活費を加えても、日本の大学と並べて検討できる水準です。学生はアルバイトもできます。「カナダの大学は費用がかかりすぎる」と諦めていたご家庭にとって、選択肢が一つ増えることになります。

**為替について。**上記の円換算は1カナダドル110円で計算した目安です。実際の負担額は支払い時のレートで変わります。円安局面では想定より膨らむ点にご注意ください。また授業料はプログラム(学部・専攻)により異なります。正確な金額は各大学の公式サイトでご確認ください。

対象となる大学・カレッジ12校 ― 条件は学校ごとに違います

ここが、他ではあまり書かれていない部分です。「現地学生と同じ授業料」と一口に言っても、学校によって中身が違います。

カナダの大学の国内学生料金には、その州に住んでいる学生向けの料金(domestic)と、他州から来たカナダ人学生向けの料金(domestic out-of-province)があります。後者のほうがやや高くなります。どちらが適用されるかは学校によって異なります。

大学・カレッジ優遇の内容
Dalhousie UniversityNSdomestic料金・学部4年間
Acadia UniversityNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
Cape Breton UniversityNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
NSCAD UniversityNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
Mount Saint Vincent UniversityNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
Saint Mary’s UniversityNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
St. Francis Xavier UniversityNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
University of King’s CollegeNSdomestic out-of-province料金・学部4年間
Université Sainte-AnneNSdomestic料金・ディプロマ/サーティフィケート課程の期間
Nova Scotia Community College(NSCC)NSdomestic料金・★高校卒業の直後の年度に入学した場合
Mount Allison UniversityNBdomestic料金・学位課程4年間
St. Thomas UniversityNB年間5,000カナダドルの割引(4年間で総額20,000カナダドル超)

ノバスコシア州10校に加えて、隣のニューブランズウィック州の2校も対象です。

特に注意していただきたい2点があります。

NSCCは「卒業した直後の年度」に入学した場合のみが対象です。高校卒業後に1年空けてから入学すると、この優遇は受けられません。ギャップイヤーを取る予定がある場合は、事前に必ずご相談ください。

St. Thomas Universityは割引型です。他校のような「現地料金への切り替え」ではなく、年間5,000カナダドルの減額という形になります。金額のインパクトは他校より小さくなります。

いつもお伝えしているとおり、学校名はすべて「例」です。どこかをお勧めするためではなく、「制度の対象範囲はここまで広い」という地図としてご覧ください。

資格を得る条件は、たった一つです

ここが、この制度で最も知られていない部分です。

Pathways Programの対象になる条件は、「ノバスコシア州の高校を卒業すること」。これだけです。

10年生から3年間通う必要はありません。11年生から2年間でもありません。12年生(高校3年生)の1年だけノバスコシア州で学び、そこで卒業すれば、資格を得られます。

つまり、こういう設計が可能になります。

他州で学び、最後の1年だけノバスコシアへ。 10年生・11年生をブリティッシュコロンビア州やアルバータ州で過ごし、12年生でノバスコシア州に移って卒業する。すると学びたかった環境で2年間過ごしながら、Pathwaysの資格も手に入ります。

日本の高校からの編入も。 日本の高校で1年生・2年生を終えてから、3年生の1年間をノバスコシア州で過ごして卒業するというルートもあります。ノバスコシア州は年齢制限が比較的ゆるやかなため、日本の高校を卒業した後にもう1年カナダで高校生をするという形も、制度上は可能です。日本で取得した単位を振り替えて、足りない分だけを履修します。

ただし——ここは正直にお伝えします。この1年勝負のルートには、かなり高い英語力が必要です。

1年で卒業要件を満たすということは、ESLで英語を学ぶ時間はほとんどないということです。最初から現地の生徒と同じ授業についていける英語力がなければ、必要な単位を1年で取り切れず、卒業できない可能性があります。教育委員会の制度としては認められていても、実際に達成できるかは別の話です。ここはお約束できません。

▶ ノバスコシア州の卒業要件(必要単位数・必修科目)はノバスコシア州教育システム・卒業要件についてで確認できます。

カレッジから移民を目指すルート

大学だけでなく、**Nova Scotia Community College(NSCC)**も対象です。こちらは現地学生と同じ授業料でカレッジに通えるため、費用を最も抑えられるルートになります。

カナダのカレッジを卒業すると、卒業後の就労許可(Post-Graduation Work Permit)を使って現地で働く道が開けます。カレッジ卒業後にカナダで就労経験を積み、そこから移民申請を目指す——という長期プランを考えているご家庭にとって、これは現実的な最安ルートの一つです。

ただし前述のとおり、**NSCCの優遇は高校卒業直後の年度に入学した場合に限られます。**この点だけは、計画の段階で押さえておいてください。

卒業後の3年間 ― 「大学の次」まで含めて考える

カナダの大学を卒業すると、卒業後に現地で働くための就労許可(Post-Graduation Work Permit)を申請できます。学位課程の場合、最長3年間です。

この時間軸を並べてみてください。高校を卒業して18歳、大学を卒業して22歳、そこから3年働いて25〜26歳。その時点で、カナダの高校を出て、カナダの大学を出て、カナダで3年の実務経験を持っていることになります。

日本の大学に進学した同級生が25歳で迎える地点とは、まったく違う景色です。どちらが良いという話ではありません。お子さんにとってどちらが合っているか、という判断の材料です。

※就労許可の要件や年数は制度変更が頻繁にあります。実際に申請される時期の最新情報を必ずご確認ください。

正直にお伝えしたいこと ― 順番を間違えないでください

ここまで制度の魅力をお伝えしてきましたが、最後に一つ、強くお願いしたいことがあります。

この制度を、ノバスコシア州を選ぶ第一の理由にしないでください。

Pathways Programは、ノバスコシア州の高校を無事に卒業できて初めて意味を持ちます。環境が合わずに途中で帰国してしまえば、1,100万円の話は存在しなくなります。

そしてノバスコシア州の留学プログラムには、費用の安さの裏側に、正直にお伝えすべき条件があります。**通う学校も住む町も選べないこと。**配置先によっては車社会の小さな町になり、留学生は自力で移動できないこと。小さな町の学校にはESLがない場合もあること。

これらを理解したうえで「この子ならやり切れる」と判断できたとき、Pathways Programは他にない強力な追い風になります。逆に、お子さんの英語力や性格に不安が残るなら、この制度があってもノバスコシアはお勧めしません。

▶ ノバスコシア州留学の全体像と、選ぶ前に知っておくべき現実はノバスコシア州 中学・高校留学プログラム(NSISP)に、包み隠さず書いています。この記事より先に、必ずそちらをお読みください。

よくあるご質問

Q. Pathways Programの対象になるには、何年ノバスコシア州にいる必要がありますか?

A. 年数の条件はありません。ノバスコシア州の高校を卒業することが唯一の条件です。12年生の1年間だけノバスコシア州で学んで卒業した場合でも対象になります。他州で10年生・11年生を過ごし、12年生だけ移動するという設計も可能です。

Q. 入学保証とは、どの大学にも必ず入れるということですか?

A. 必要科目の平均70%を満たせば、提携校への入学が保証されます。ただし学校・学部によって入学基準や奨学金の要件は異なるため、特定の学部を目指す場合は個別の確認が必要です。

Q. IELTSやTOEFLは必要ですか?

A. ノバスコシア州のGrade 12アカデミック英語で70%以上を取得していれば、大学出願時の英語能力試験は免除されます。別途スコアを取得する必要はありません。

Q. 4年間で実際いくら安くなりますか?

A. ダルハウジー大学を例にすると、留学生料金が年間約35,000カナダドルに対し、Pathways適用後は1万カナダドルを下回る水準です。4年間の差額は約100,000カナダドル、1カナダドル110円換算でおよそ1,100万円になります。金額は大学・学部と為替により変動します。

Q. カレッジ(NSCC)も対象ですか?

A. 対象です。ただしNSCCは、ノバスコシア州の高校を卒業した直後の年度に入学した場合に限られます。1年空けると対象外になるため、ギャップイヤーを検討している場合は事前にご相談ください。

Q. 日本の高校を卒業してからでも利用できますか?

A. 制度上は可能性があります。ノバスコシア州は年齢制限が比較的ゆるやかで、日本で取得した単位を振り替えて不足分を履修し、1年で卒業するという形が考えられます。ただし1年で卒業要件を満たすには高い英語力が前提になり、達成をお約束できるものではありません。個別にご相談ください。

高校留学の「その先」まで、一緒に設計しましょう

留学プランは、教育プランの一部でしかありません。

高校をどこで過ごすか。その先の大学をどうするか。さらにその先、カナダで働くのか、日本に戻るのか。どんな仕事をしたいのか。そこまで含めて考えたとき、初めて「今どこの高校に行くべきか」の答えが出ます。

Pathways Programのような仕組みは、知っているかどうかだけで選択肢の幅が変わります。私たちがカナダの教育委員会や大学・カレッジの担当者と直接会って情報を集めているのは、そのためです。

お子さんの英語力、性格、ご家庭の予算、そして将来の希望。それらを伺ったうえで、この制度が活きるプランかどうか、率直にお伝えします。

▶ カナダ高校留学の3つの出口(日本の大学・カナダの大学・その先)の全体像はカナダ高校留学の出口ガイドに、カナダ東海岸全体の比較はアトランティックカナダの高校留学にまとめています。

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この記事の情報について 制度内容・対象校・条件はNSISP発行のPathways Program資料(2025年版)にもとづき、2026年8月に確認したものです。学費は各大学・学部により異なり、為替により日本円での負担額も変動します。対象校や条件は年度ごとに見直される場合があります。進学の際は必ず各大学の最新情報をご確認ください。この記事は毎年、新年度の資料が出る時期に更新します。

参考(公式情報・2026年8月確認)

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