キャタリストカナダの水谷です。実際に留学を検討するご家族とお話をする中で、様々な状況やご要望に合わせてその都度リサーチをしてそのご家庭に合う留学先を提案しています。今日はその事例を1つご紹介します。
先日ご相談いただいた保護者の方が、面談の途中で、はっきりこうおっしゃいました。
「うちは、カトリックではなくプロテスタントなんです」
その一言で、学校選びの地図が変わりました。お母様の希望は「子どもが信仰のある環境に身を置けるといいな」。それは「あれば嬉しい」条件ではなく、進路を決めるための軸でした。
信仰は、ご家庭の意思決定の中で、最も揺れない条件のひとつです。費用や都市の希望は、話し合ううちに動きます。でも信仰は動きません。だからこそ、最初に正しく仕分けておく必要があります。
ところが、日本語で読める留学情報には、この視点がほとんどありません。「カナダにはカトリックの公立学校がある」までは書かれていても、プロテスタントのご家庭がどこを選べばいいのかは、誰も書いていない。この記事は、その空白を埋めるために書きました。
結論:カナダの学校は「Catholic」「Christian」「Public」の3つに分かれる
結論:学校名に「Catholic」とあればカトリック。「Christian」とあれば、その多くはプロテスタント系の私立。どちらもなければ、宗教色のない公立です。
カナダの学校を宗教背景で見ると、大きく3つに分かれます。
1. Catholic(カトリック) アルバータ州・オンタリオ州・サスカチュワン州には、公立のカトリック教育委員会があります。税金で運営される公立校でありながら、カトリックの宗教教育を行う学校です。留学生も受け入れています。私立のカトリック校もありますが、カトリック系の学校は必ず「Catholic」と名乗ります。
2. Christian School/Christian Academy(キリスト教系私立) 「Christian」を名乗る学校の多くは、プロテスタント系の私立校です。カトリック系の学校は「Catholic」と名乗るので、名前だけでかなりの部分まで見分けがつきます。
3. Public(公立・宗教色なし) BC州やマニトバ州の公立校、各州の「District School Board」「Public Schools」などがこれに当たります。授業に宗教教育はありません。ただし、生徒が地元の教会に通うことは自由です。
一つだけ例外を知っておいてください。アルバータ州には、公立の教育区が運営する「キリスト教系の学校」があります。たとえばスリーヒルズの Prairie Christian Academy は、ゴールデンヒルズ教育区(公立)の学校で、寮があります。私たちも生徒を送り出してきた学校です。カルガリーの Calgary Christian School も、出願は公立のパリサー教育区を通します。「公立か私立か」と「宗教色があるかないか」は、アルバータ州では別の軸だと考えてください。
カトリックとプロテスタントの違い
結論:どちらもキリスト教です。違いは、教会のかたちと礼拝のスタイルにあります。どちらが優れているという話ではありません。
カトリックは、ローマ教皇を中心とする一つの教会です。礼拝は「ミサ」と呼ばれ、聖職者は「神父」です。
プロテスタントは、16世紀の宗教改革から生まれた教会の総称です。一つの組織ではなく、多くの教派に分かれています。聖書を中心に置き、礼拝では説教を重んじます。聖職者は「牧師」と呼ばれます。
日本の学校で言えば、上智大学はカトリック、青山学院や明治学院はプロテスタントです。日本の「ミッション系」にも両方があるのと同じで、カナダの学校にも両方があります。
カトリックの学校にプロテスタントの子が通うことは、制度上はできます。ただ、宗教の授業も学校のミサも、カトリックの形で行われます。「キリスト教の学校なら、どちらでもいい」というご家庭もあれば、「礼拝のかたちが違うのは落ち着かない」というご家庭もあります。どちらが正しいということはなく、ご家庭が何を大切にしているかで決まります。
プロテスタントの中にも教派がある——「超教派型」と「特定教派型」
結論:Christian School には、教派を問わず受け入れる「超教派型」と、特定の教派に根ざした「特定教派型」があります。学校のサイトにある「Statement of Faith(信仰告白)」で確認できます。
プロテスタントのご家庭にとって、本当の見極めはここからです。
超教派型の学校は、さまざまな教会に通う家庭の子どもを受け入れています。学校として特定の教派を名乗らず、キリスト教の共通の土台に立って教育をします。留学生を受け入れているキリスト教系私立の多くは、このタイプです。
特定教派型の学校は、ある教派の伝統に根ざしています。たとえば、BC州サレーの Pacific Academy は、福音派・ペンテコステ派であることを明記しています。サスカチュワン州ロスターンの Rosthern Junior College は、メノナイト派の伝統を持つ寮制の学校です。
ご家庭の教会と教派が近ければ、礼拝や祈りのスタイルに違和感がなく、安心感はぐっと増します。逆に、同じプロテスタントでも、礼拝の雰囲気が大きく違うことがあります。
確認の方法は簡単です。学校のサイトで「Statement of Faith」または「Mission & Beliefs」のページを探してください。学校が何を信じ、どの伝統に立っているかが書かれています。英語の文章なので、ご相談いただければ一緒に読みます。そして、ご家庭が通っている教会の教団名を、最初に教えてください。照らし合わせの出発点になります。
信仰を軸にした4つの選び方
結論:信仰環境の濃さと費用のバランスで、4つの型があります。「どれが正解」ではなく、ご家庭の優先順位で選びます。
A:キリスト教系私立に通い、クリスチャン家庭にホームステイ
信仰環境が最も濃い選び方です。学校で礼拝があり、聖書の授業があり、家に帰ればホストファミリーと一緒に食前の祈りをし、日曜日には教会へ行く。生活のすべてが信仰とつながります。
キリスト教系の私立の中には、クリスチャン家庭のホームステイを学校自身が手配するところがあります。たとえばBC州の Kelowna Christian School は、留学生向けの英語サポート(ELL)と、クリスチャン家庭のホームステイを自校で持っています。同じオカナガン地方の Vernon Christian School も、クリスチャン家庭のホームステイを用意しています。
トレードオフは費用です。私立なので授業料は公立より高くなります。また、学校の規模が小さく、選べる科目や部活動の幅が公立より狭いことがあります。
B:公立に通い、地元の教会につながる
費用を抑えながら信仰を続ける選び方です。学校は宗教色のない公立で、信仰生活は地元の教会で続けます。
カナダには、小さな町にも教会があります。日曜礼拝のほか、多くの教会に中高生向けのユースグループがあり、留学生が同世代の友達をつくる場にもなります。ホームステイの希望条件に「クリスチャン家庭」と書いておけば、ホストファミリーと一緒に教会に通える可能性も高まります。
トレードオフは、教会を自分で選び、自分で通い続ける必要があることです。本人の意思がいちばん問われる型です。
C:1年目は私立で土台をつくり、2年目から公立へ
費用と環境のバランスを取る選び方です。最初の1年は、キリスト教系私立の小さな環境で英語と生活の土台をつくり、クリスチャン家庭で暮らしながら地元の教会ともつながる。2年目からは公立に移り、科目の選択肢が広い環境で卒業を目指します。
留学の最初の1年は、英語も生活も、いちばん支えが必要な時期です。そこに信仰の支えが重なるのは、ご本人にとって大きな安心になります。そして、1年目につながった教会は、2年目に学校が変わっても、そのまま通い続けられます。
トレードオフは、学校を移る手続きが入ることです。2年目の出願時期と、移った先でも卒業単位がきちんとつながるかを、最初から設計しておく必要があります。
D:キリスト教系の全寮制に入る
学校の中で生活が完結する選び方です。寮の生活そのものがキリスト教の価値観の上に組み立てられていて、朝のデボーション(聖書を読む時間)やチャペル、日曜礼拝への引率が、学校の日課として用意されています。信仰環境の濃さという点では、いちばん徹底した型です。
留学生を受け入れている、寮のあるキリスト教系の学校は、カナダに実際にあります。
- Niagara Christian Collegiate(オンタリオ州フォートエリー):Grade 6〜12。学校自身が「独立・無宗派のキリスト教の通学・寮制学校」と説明しています。男女別の寮があり、留学生向けのオリエンテーション(英語テスト、制服、トロント空港への出迎え)も整っています。
- Rosthern Junior College(サスカチュワン州ロスターン):Grade 9〜12。メノナイト派の伝統を持つ小さな町の学校です。
- Prairie Christian Academy(アルバータ州スリーヒルズ):公立のゴールデンヒルズ教育区の中にあるキリスト教系の学校で、寮は35名規模。男女それぞれのディーン(寮長)が生活を見ます。私たちが実際に生徒を送り出してきた学校です。
- このほか、オンタリオ州ビームズビルの Great Lakes Christian High School、サスカチュワン州カロンポートの Briercrest Christian Academy にも寮があります。
寮を選ぶときに、先に知っておいていただきたいことが3つあります。
一つ目は費用です。寮はホームステイより高くなるのが普通です。たとえば Rosthern Junior College の留学生の寮生は $34,450(2024-25年度の掲載値)。食事・光熱費・洗濯まで含んだ金額ですが、ホームステイの型より総額は上がります。
二つ目は、町の大きさです。寮のある学校は、小さな町にあることが多くあります。落ち着いた環境で勉強と信仰に集中できる反面、都市の刺激や週末の選択肢は限られます。
三つ目は、日曜日の過ごし方です。寮からどの教会へ行くのか、引率があるのか、自分で選べるのか。学校によって違います。ご家庭の教派と近い教会に通えるかどうかは、出願前に確認しておく価値があります。
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ホームステイで「クリスチャン家庭を希望」は、言っていい
結論:言っていいです。教育委員会でも私立でも、希望条件として出せます。ただし、公立では「希望」であって「保証」ではありません。
「宗教のことを希望に書くのは、失礼にならないでしょうか」と聞かれることがあります。なりません。ホームステイの申込書には、食事やアレルギー、ペットと並んで、生活上の希望を書く欄があります。「クリスチャン家庭で、日曜日に教会へ一緒に行けるとうれしい」と書くことは、ごく普通の希望です。
キリスト教系の私立で、学校がホームステイを手配する場合は、ホストファミリー自体がクリスチャン家庭であることが前提になっていることが多くあります。公立の教育委員会の場合は、希望として受け付けられ、できる範囲で配慮されます。地域によってクリスチャン家庭のホストの数が違うので、必ず叶うとは限りません。
一つだけ、順番を間違えないでください。ホームステイ先が決まってから「クリスチャン家庭ではなかったので変えてほしい」と頼むのは、とても難しくなります。希望は、申込書の段階で書面で出す。これが鉄則です。ホームステイ先が決まったあとの関わり方は、ホームステイは変更できる?「合わなかったら」の本当の答えにまとめています。
費用の目安
結論:キリスト教系私立は、公立より授業料が高くなります。ただし学校によって幅が大きく、掲載値のない学校も多いので、候補を絞ってから確認するのが現実的です。
費用の例(各校サイトの掲載値・カナダドル)
Surrey Christian School(BC州サレー・通学+ホームステイ):授業料 $22,500(医療保険・ELL込み)+ ホームステイ $15,000(9月〜6月)+ 出願料 $500(2025-26年度)
Rosthern Junior College(サスカチュワン州・全寮制):留学生の寮生 $34,450/通学生 $22,950(2024-25年度)。寮費には食事・光熱費・洗濯が含まれます
Niagara Christian Collegiate(オンタリオ州・全寮制):サイトに金額の掲載はなく、学習サポートや教材を含む「オールインクルーシブ」の案内のみ。金額は問い合わせが必要です
※各校サイトの掲載値です。年度と為替で変わります。航空券、カストディアン(現地の後見人)費用、お小遣い、弊社のサポート費は含みません。
同じ「キリスト教系私立」でも、ホームステイか寮か、ELLが授業料に含まれるか別料金か、で総額は大きく変わります。公立の教育委員会の費用との比較は、候補が2〜3校に絞れた段階で、同じ条件で並べてお見せします。
正直にお伝えしておきたいこと
ここは、聞きたいことではなく、聞くべきことをお伝えします。
一つ目。キリスト教系の学校では、礼拝や聖書の授業は必修です。ご本人が「行きたくない」と思っても、選べません。保護者の方の信仰と、お子さん本人の気持ちが同じとは限りません。学校を決める前に、ご本人と話してください。
二つ目。キリスト教系の私立は、留学生の数が少ない学校が多くあります。学年ごとに留学生の数に上限を設けている学校もあります(たとえばBC州の Abbotsford Christian School)。日本人が少なく英語に浸れるのは大きな利点ですが、受け入れ枠が小さいぶん、早めに動かないと枠が埋まります。
三つ目。信仰の軸だけで学校を決めないでください。町の大きさ、気候、英語サポートの手厚さ、やりたい部活動。信仰を大切にしながら、それ以外の条件とのバランスを取る。それが、留学を最後まで続けられる学校の選び方です。
よくある質問
Q. 公立のカトリック校に、プロテスタントの子は入れますか? A. 制度上は入れます。留学生を受け入れているカトリック教育委員会の多くは、信仰を問わず生徒を受け入れています。ただし宗教の授業や学校のミサはカトリックの形で行われます。教派の違いを大切にするご家庭には合わない場合があります。
Q. 「Christian School」はどの教派ですか? A. 学校ごとに違います。多くはプロテスタント系で、教派を問わない超教派型が中心ですが、特定の教派に根ざした学校もあります。学校サイトの「Statement of Faith(信仰告白)」で確認できます。
Q. 教会に通いたいです。ホームステイ先が連れて行ってくれますか? A. ホームステイの希望条件に「クリスチャン家庭・一緒に教会に通いたい」と書いておけば、実現しやすくなります。キリスト教系私立が手配するホームステイは、クリスチャン家庭が前提のことが多くあります。公立に通う場合でも、地元の教会は自分で探して通えます。
Q. 信仰のない子でも、キリスト教系の学校に入れますか? A. 多くの学校は入れます。ただし礼拝と聖書の授業は必修です。学校によっては、入学時に学校の方針に同意する書類への署名を求めます。
Q. カトリックの教育委員会と、宗教色のない公立の教育委員会は、どう違いますか? A. どちらも公立で、州の卒業資格を取れる点は同じです。違いは、カトリックの教育委員会では宗教の授業と宗教行事があることです。費用はほぼ同じ水準です。
Q. キリスト教系私立で卒業しても、州の卒業資格は取れますか? A. 州の認可を受けた私立校なら取れます。BC州では、認可を受けた私立校の多くが公立と同じBC州の卒業資格(Dogwood Diploma)を出します。候補の学校が認可校かどうかは、出願前に確認してご案内します。
Q. クリスチャンの全寮制はありますか? A. あります。オンタリオ州の Niagara Christian Collegiate(無宗派のキリスト教校)、サスカチュワン州の Rosthern Junior College(メノナイト派)、アルバータ州の Prairie Christian Academy(公立教育区の中のキリスト教系の学校)などが、寮を持ち留学生を受け入れています。
Q. 寮とホームステイでは、信仰の環境はどちらが濃いですか? A. 一般には寮です。デボーションやチャペル、日曜礼拝への引率が学校の日課に組み込まれているためです。ホームステイは家庭によって濃さが変わります。ただし寮は費用が上がり、小さな町の学校が多くなります。
Q. 寮からでも、日曜日に教会へ行けますか? A. 多くの学校で行けます。学校が引率する場合と、いくつかの教会から選べる場合があります。ご家庭の教派と近い教会に通えるかは学校ごとに違うので、出願前に確認します。
Q. 1年目は私立、2年目から公立に移ることはできますか? A. できます。ただし、移る先の教育委員会への出願時期と、1年目に取った単位が卒業単位としてつながるかを、最初の出願の段階から設計しておく必要があります。
信仰は、最も揺れない選択の軸
冒頭の保護者の方が「カトリックではなくプロテスタントです」とおっしゃったとき、私は、ご家庭が大切にしてきたものの輪郭が見えた気がしました。
信仰を大切にするご家庭にとって、学校の宗教的背景は、パンフレットの隅に書いてある情報ではありません。子どもが毎日を過ごす環境そのものです。そして、それはお子さんが一人で異国に暮らすとき、心の支えにもなります。祈る場所がある。同じ信仰を持つ大人がいる。日曜日に行く場所がある。これは、ホームシックの夜に効きます。
留学プランで大切なのは、パンフレット(学校情報)からのスタートではなく、プロフィール(留学生の詳細)からのスタートです。留学を希望されるお子さんについて詳しくお話をうかがい、信仰とそれ以外の部分のバランスを取りながら、ベストの選択をお手伝いします。
「信仰を大切にできる環境で、カナダの高校生活を送らせたい」——そのお話を、お聞かせください。
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キリスト教系の寮のある学校は数が限られ、受け入れ枠も小さいので、早めのご相談をおすすめします。
