こんにちは。キャタリストカナダの水谷です。
こういうご相談をいただくことがあります。
「子どもは海外のカナダ式インターナショナルスクールに通っていて、オンタリオ州の単位をいくつか取っています。カナダ本国の高校に移りたいのですが、これまで取った単位は無駄になりませんか」
調べても答えが出てこない、という方が多いのだと思います。日本語で書かれたページは「そこで卒業する」話で終わっていて、「途中でカナダに移る」ことを扱っていないからです。
先に結論をお伝えします。単位が引き継げるかどうかは、通っている学校の認定で決まります。そして無駄になるかどうかは、動く時期で決まります。 この2つは分けて考えてください。
この記事は、次のようなご家庭に向けて書いています。
- マレーシアや香港など、海外のカナダ式(オンタリオ課程)の学校に通っている
- 日本国内でオンタリオ課程の学校に通っている
- 日本の高校に通いながら、オンラインでオンタリオ州の単位を取っている
いずれも「すでにオンタリオの単位を取り始めている」という点で同じです。制度や数字は2026年9月時点で州の公式資料をもとに確認したものです。
まず、その単位は「本物のオンタリオ単位」ですか
いちばん大事な確認から始めます。
オンタリオ州教育省は、州のカリキュラムを海外で教える学校を定期的に視察しています。視察で良好と判断されれば、その学校の校長はOSSDに向けた単位を授与できます。
If a school receives a satisfactory inspection report, the principal is authorized to grant credits towards OSSD. — Ontario|International schools offering credits towards the OSSD
この視察を受けている学校は、2026年9月時点で19校。州がデータとして公開しています(data.ontario.ca|Private school contact information)。国・地域はアジア、ヨーロッパ、中東、カリブ海などに広がっていて、日本にも1校あります。
ご自宅で確かめられる4つのこと
学校名を調べる前に、お手元の書類で確かめられることがあります。
- 通知表にOEN(Ontario Education Number)が載っているか。 9桁の生徒番号で、オンタリオの教育機関が割り振ります
- 科目コードがオンタリオの形式か。 ENG2D、MTH1W、CHC2D のような形です
- OEN入りの正式なOST(Ontario Student Transcript)を発行してもらえるか。 OSTは公式の成績証明書で、州の手引きはすべてのOSTにOENの記載を求めています
- OSTに載っている学校番号(BSID)を、州の私立校データで照合する
ここまで確認できれば、少なくとも「どういう種類の単位なのか」は分かります。ご家庭でできる確認としては、ここが限界でもあります。 その先は受け入れ先の学校の判断になるからです。
州の一覧に学校名がなくても、あきらめる必要はありません
よくある誤解です。一覧に載っていない=単位が無効、ではありません。
海外の学校がオンタリオ州内の登録私立校と提携し、単位はそのオンタリオ校の名義(BSID)で発行されるという形が広くあります。この場合、成績証明書に出てくるのは提携先のオンタリオの学校名です。
ですから、確かめるのは学校のパンフレットではなく成績証明書に何が書かれているかです。
「カナダ式」=オンタリオとは限りません
もうひとつ、注意点を。BC州にも海外認定校の制度があり、こちらで学ぶと卒業資格はBC州のもの(Dogwood)になります。日本国内にもBC州の認定校があります。
名前に「カナダ」と付いていても、IBだけを提供していてオンタリオの単位を出していない学校もあります。まず、どの州の認定を受けているかを確認してください。 BC州の単位でオンタリオへ移る場合は、州をまたぐ転校として扱いが変わります。
いつ動くか——ここで無駄が出ます
結論から言います。学期の区切りで動けば、単位は無駄になりません。
理由は単純です。学期の途中で抜けると、そこまでの学習を単位にする仕組みが基本的にありません。8割まで進んでいた科目も、区切りを待たずに抜ければ残らない。失うのは単位だけでなく、そこまでの時間です。
オンタリオの学年暦は9月第1週から6月最終週まで。多くの学校が2学期制で、公立教育委員会の留学生の入学は9月と2月の年2回が基本です。
在籍している学校の学年暦が1月始まりの場合は、こう考えます。
- 12月にその学年を修了 → 2月入学
- 7月下旬に前期を修了(後期は始めない)→ 9月入学
海外の学校は学費が学期単位のことが多いので、始めない学期の学費も発生しません(学校ごとに要確認)。
出願の締切は入学の半年前後です。9月入学なら春まで、2月入学なら秋まで。動くと決めてから準備するのでは間に合わないことがあります。
転入前にやっておくこと——単位認定の依頼
ここが実務の中心です。
転校先が決まってから成績証明書を送るのではなく、転入前にOEN入りのOSTを取り寄せ、受け入れ先の学校に事前の単位認定を依頼します。
なぜ先にやるかというと、認定するのは受け入れ校の校長だからです。州の規定では、オンタリオ外や視察を受けていない学校から来た生徒について、校長が過去の学習を評価して単位を認定すると定められています(PPM 129)。
視察を受けた学校の単位は「OSSDに向けた単位」と州が明記しているので、科目ごとのオンタリオ単位として扱われる見込みがあります。ただし転入時の扱いを明記した州の文書は見当たりません。 ですから、こちらから先に確認して、書面で回答をもらっておく。これに尽きます。
ちなみに同等性評価には上限があります。9年生・10年生分は最大16単位まで。11年生・12年生は同等性評価の対象外で、チャレンジ(試験等で単位を認めてもらう手続き)のみ、最大4単位・1教科2単位までです。つまり学年が上がるほど、単位の扱いは動かしにくくなります。
Grade 10の科目の「種類」が、進学の道を決めます
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。そして、いちばん見落とされます。
オンタリオでは9年生の科目が一本化されていますが(コードに「W」が付きます)、10年生には科目の種類の分かれ目があります。
- Academic(D):大学進学の流れ
- Applied(P):カレッジ進学の流れ
- Open:どちらでもない科目
この分かれ目が効いてくるのは、11年生からです。
| 学年 | 大学進学の流れ | カレッジ進学の流れ |
|---|---|---|
| Grade 10 | ENG2D(Academic) | ENG2P(Applied) |
| Grade 11 | ENG3U(University) | ENG3C(College) |
| Grade 12 | ENG4U(University) | ENG4C(College) |
カナダの大学出願には ENG4U がほぼ必須です。そしてENG3Uの前提科目は「Grade 10のAcademic英語(ENG2D)」。つまり10年生で何を取っていたかが、2年後の出願資格につながっています。
海外の学校で、英語力を見てAppliedに置かれているケースは珍しくありません。お子さんの通知表を見て、科目コードの最後が「P」になっていたら、ここを確認してください。
「Appliedだから終わり」ではありません
大事なのはここからです。戻る道は、州の制度として3つ用意されています。
- 校長による前提科目の免除。 州の規定に「その生徒が前提科目を取らずにその科目で成功できると校長が判断すれば、免除できる」とあります。
- 移行コース(transfer course)。 別の種類の科目へ移るための講座で、修了すると部分的な単位が出ます。
- 取り直し。 夏期講習、夜間、オンライン、州の通信課程などで、前提科目そのものを取り直します。
1番目については、実際にこういうことがあります。海外の学校で10年生の英語がAppliedだったけれど、その科目で学年1位の表彰を受けていた——という生徒がいました。これは校長に免除を相談する、とても強い材料になります。
免除を動かすのは、お願いではなく材料です。 成績、評価、本人の取り組み。根拠があれば、校長は判断できます。
科目の選び方そのものについてはGrade 11・12の科目選択もあわせてご覧ください。
卒業要件——数字より、中身を見てください
OSSDの卒業には、30単位に加えて、地域貢献40時間、識字要件、オンライン学習2単位が必要です(Ontario Schools 第6章)。
2024年9月以降に9年生になった生徒は、必修17単位+選択13単位です。技術教育1単位と、STEM系(ビジネス、コンピュータ、協同教育、数学、理科、技術のいずれか)1単位が入りました。以前の「必修18・選択12」ではありません。
必修の中身で、知っておくと楽になることが2つあります。
校長は必修のうち最大3単位を、他分野の科目で置き換えられます。 置き換えた記録は成績証明書に残ります。
そして数学の「11年生か12年生で1単位」は、U(大学準備)である必要がありません。 C(カレッジ)やM(混合)でも卒業要件は満たせます。理数が苦手なお子さんには、これは大きい情報です。ただし進学先が数学を要求する場合は別なので、出口から逆算して決めてください。
オンライン学習2単位には、保護者が理由を問われずにオプトアウトできる制度があります(PPM 167)。注意点は、前の学校で免除されていても、転入先で改めて用紙を提出する必要があることです。締切を設けている教育委員会もあります。
識字要件(OSSLT) は年2回。2026-27年度は秋が2026年11月3日〜30日、春が2027年3月30日〜4月19日です(EQAO)。原則10年生で初めて受験します。入学時期によっては、着いてすぐに受験時期が来ます。
なお、「その教育委員会で最低○単位を取らないと卒業できない」という規定は、州の規定にはありません。 卒業証書は校長の推薦にもとづいて州の大臣が授与します。ただし1年間の在籍で卒業証書を出すかどうかは校長の判断になるので、卒業を目指すなら事前に確認してください。
受け入れ側にも条件があります
ここも見落とされがちです。海外の学校での成績が、そのまま受け入れ審査の材料になります。
公立教育委員会の留学生プログラムは、それぞれ条件を公開しています。例を挙げます(2026年9月時点)。
| 教育委員会(例) | 成績の条件 |
|---|---|
| Simcoe County DSB | 平均65%以上。在学中も維持 |
| York Region DSB | 平均65%以上。12年生はIELTS 5.5相当 |
| Halton DSB | 英語・数学など主要科目で70%以上。12年生はIELTS 6.0 |
| Upper Grand DSB | B平均以上(およそ75%) |
| Avon Maitland DSB | 数値基準なし(成績証明と空き状況で判断) |
同じオンタリオでも、これだけ違います。成績表を見てから候補を絞るという順番でないと、出願して断られる時間を失います。年齢の条件(当該年度末に18歳以下など)や締切も委員会ごとに違うので、そこも一緒に見ます。
地域や学校の選び方はオンタリオ州 高校留学ガイドをご覧ください。
手続きと時間
学年の決まり方
カナダでは学年が生年(暦年)で決まります。日本の学年は4月2日から翌年4月1日までなので、1月から3月生まれのお子さんは1学年ずれます。 ただし実際の配置は、年齢より取得単位で決まります。
就学許可
日本からの申請で審査期間はおよそ4週間です(IRCC、2026年9月時点)。国によって変わるので、いま住んでいる国の目安で見てください。許可証そのものは最初に入国した空港で発給されます。
カストディアン
17歳未満で保護者を伴わない場合は必須です。書類(IMM 5646)は両側で公証が必要です。
資金証明
生活費の基準額は2026年9月1日以降の申請で年23,448カナダドル(学費・交通費は別)です(IRCC)。
費用の目安
オンタリオ州の公立高校に留学する場合、授業料・ホームステイ・保険などを合わせた年間総額は、おおむねカナダドルで28,000〜33,000です(複数の教育委員会の2026-27/2027-28年度の公表値より)。全体の費用設計はカナダ高校留学の費用ガイドもご覧ください。
よくある質問
Q. いま取っている単位は、そのままカナダの高校に持っていけますか。 学校の認定によります。オンタリオ州の視察を受けた学校の単位は「OSSDに向けた単位」と州が定めているので、引き継がれる見込みがあります。ただし最終的に認定するのは受け入れ校の校長です。転入前にOEN入りのOSTを取り寄せ、事前に確認しておくのが確実です。
Q. オンラインでオンタリオの単位を取っています。これも同じですか。 州の認定を受けたオンライン校(BSIDを持つ学校)で取った単位は、正規のオンタリオ単位です。現地の学校に移れば、同じ成績証明書に積み上がります。ここでも確認するのは学校名ではなく、成績証明書にどう記録されているかです。
Q. 学期の途中で移ることはできませんか。 制度上できないわけではありませんが、その学期に進めた分が単位にならないため、おすすめしていません。安全や心身に関わる状況は別です。その場合は単位よりも、まず動くことを優先します。
Q. 10年生の英語がAppliedでした。大学進学はもう無理ですか。 無理ではありません。校長による前提科目の免除、移行コース、夏期・夜間・オンラインでの取り直しという3つの道があります。ただし早く気づくほど選べる手が多いので、11年生の科目を選ぶ前にご相談ください。
Q. 1年間だけ通って、OSSDで卒業できますか。 州の規定に「その教育委員会で最低○単位」という決まりはありません。ただし識字要件やオンライン学習2単位など、在籍中に満たすべき条件があり、最終的には校長の判断です。書面で確認したうえで決めてください。
おわりに
この記事でお伝えしたかったことは、2つだけです。
単位が本物かどうかは、パンフレットではなく成績証明書で分かります。 そして無駄になるかどうかは、動く時期で決まります。 この2つを押さえれば、あとは手順の話です。
調べても答えが出てこなかった、という方が多い領域だと思います。日本語のページが扱っていないからで、お子さんの状況が特殊だからではありません。
留学プランで大切なのは、パンフレット(学校情報)からのスタートではなく、プロフィール(留学生の詳細)からのスタートです。留学を希望されるお子さんについて詳しくお話をうかがい、これまでに取った単位とそれ以外の部分のバランスを取りながら、ベストの選択をお手伝いします。
「この単位は引き継げるのだろうか」——そのお話をお聞かせください。お手元の通知表と成績証明書を拝見できれば、移れる学校と、動く時期を一緒に整理します。
卒業したあとの進路についてはカナダ高校留学の3つの出口もご覧ください。
