留学プランニング

カナダの高校で単位を落としたら、どうなるのか——州ごとに違う、立て直し方

水谷通孝

カナダ在住・カナダ高校留学エージェント歴20年(2006年創業)。2025年にカナダへ移住し、自身の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

こんにちは。キャタリストカナダの水谷です。

先に結論をお伝えします。単位を落としても、立て直せます。 ただし方法は州によって違い、原則として卒業する州の中で補うことになります。

「もし単位を落としたら、卒業できなくなるのではないか」。お子さんをカナダの高校に送り出したご家庭から、いちばん多くいただく不安のひとつです。日本の高校とは仕組みが違うので、想像がつかないのだと思います。

この記事では、単位を落としたときに実際に何が起きて、どんな手が打てるのかを整理します。制度や数字は2026年9月時点で州の公式資料をもとに確認したものです。

まず、カナダの高校には「ダブる」という仕組みがありません

ここが日本の高校といちばん違うところなので、最初にお伝えします。カナダの高校には、学年をやり直す(留年する・ダブる)という仕組みが基本的にありません。

日本の高校では、単位が足りなければ同じ学年をもう一度やり直すことになります。クラスが変わり、後輩と一緒に学び直す。その負担の大きさを知っているからこそ、「落とした」と聞いた瞬間に留年を思い浮かべるご家庭が多いのだと思います。

カナダは違います。科目ごとに単位を積み上げて卒業要件を満たす仕組みなので、ひとつ落としても他の科目には影響しません。

たとえば数学を落としたとします。その場合も、学年は上がります。 他の科目は取れているのですから、次の学年の科目に進む。そして落とした数学だけを、どこかで取り直す。それだけです。

学年ごとではなく、科目ごと。だから、足りない分だけを埋めればいい。これが、立て直しができる理由です。

「アルバータは100単位」に驚かなくて大丈夫です

卒業に必要な単位数を並べると、州ごとにずいぶん違って見えます。オンタリオ州は30単位、BC州は80単位、アルバータ州は100単位、マニトバ州は30単位、ノバスコシア州は18単位。

ここで誤解されやすいのですが、この数字の違いは、大変さの違いではありません。

「アルバータはオンタリオの3倍以上きついのか」と思われるかもしれません。そうではなく、1単位の数え方が州ごとに違うだけです。オンタリオとマニトバは1科目=1単位。BC州は1科目=4単位が基本。アルバータは1科目=5単位が基本です。さらに、オンタリオとマニトバは9年生から数え、BC・アルバータ・ノバスコシアは10年生から数えます。

科目数に直すと、こうなります。

州卒業に必要な単位1科目あたり数える学年科目数のめやす
オンタリオ30単位1単位9〜12年生約30科目
マニトバ30単位1単位9〜12年生約30科目
BC80単位4単位が基本10〜12年生約20科目
アルバータ100単位5単位が基本10〜12年生約20科目
ノバスコシア18単位1単位10〜12年生約18科目

どの州も、1年あたりおよそ6〜8科目。卒業までに履修する科目の数は、ほとんど変わりません。

ですから、単位の数字そのものを州どうしで比べても意味がありません。見るべきは単位の数ではなく、どの科目が必要かです。そして落とした1科目をどう埋めるかも、ここから先の話になります。

落とした単位を埋める方法は、3つ

結論から言うと、手段は3つしかありません。夏の単位講習、オンライン、翌学期・翌学年への繰り越し。 どれが使えるかが、州によって違います。

1. 夏の単位講習

7月の1か月ほどで、1科目分の単位を取る方法です。多くの教育委員会が地元の生徒向けに開いていて、留学生を受け入れている学区もあります。

ただし注意が必要です。まず、通常なら1年かけて履修する内容を4週間に圧縮するので、負荷は相当なものになります。そして現地にいないと受けられないので、滞在先の手配とセットでないと実行できません。夏に帰国するつもりだった予定を組み直すことになります。

登録は年明けから春にかけて開き、締切は5〜6月が多いところです。探しはじめるのは2〜3月と考えておいてください。

2. オンライン

学年中に、通っている学校の授業と並行してオンラインで単位を取る方法です。時間の融通がききますが、州によって使えたり使えなかったりします。

3. 翌学期・翌学年に繰り越す

落とした科目を、次の学期か次の学年の時間割に入れ直す方法です。特別な制度を使うわけではないので、いちばん自然な形です。

9年生から11年生のうちであれば、多くの場合これで足ります。 卒業までにまだ時間があり、取り直す枠が残っているからです。減るのは選択科目の自由度で、卒業の時期そのものは動かないことが多いと考えてください。

ただし12年生は別です。卒業要件に関わる科目を12年生で落とすと、卒業が延びます。 半年、あるいは1年。ここは繰り越しでは吸収できません。

そして12年生には、もうひとつ見落とされやすい制約があります。年齢です。

多くの教育委員会やプログラムが、留学生に年齢の上限を設けています。「その学年度の開始時点で18歳以下」といった形で、しかも入学のときだけでなく、毎年度あらためて判定するところもあります。

つまり、卒業が延びたときに、同じ学校・同じ教育委員会では卒業できなくなる可能性があります。 卒業まであと少し、というところで、その学校に在籍できなくなる。実際に起こりうることです。

ここで詰まっても、道が消えるわけではありません。年齢の条件が違う州やプログラム、成人向けの課程など、続けられる形はあります。ただ、「延ばせばいい」という単純な話ではなくなります。

だから12年生だけは、落としそうだと分かった時点で早く動く必要があります。 学年が終わってから考えるのでは、選べる手が減ります。

だから、夏の単位講習やオンラインが本当に効いてくるのは、前提科目が足りないときと、12年生のときです。それ以外の学年なら、慌てずに翌学期へ回せば済むことが多いのです。

そして、延びること自体を悪いことだと決めつける必要もありません。無理に間に合わせて力が足りないまま次へ進むより、高校のうちに積み上げ直したほうがいい場合もあります。

手段は、州によって違う

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。同じ「単位を落とした」でも、どの州にいるかで打てる手がまったく変わります。

州オンライン夏の単位講習
オンタリオ選択肢が最も多い。学区のオンライン講座、州の視察を受けた私立オンライン校など留学生を受け入れている学区がある
BC州内にいることが条件学区によって受け入れ方が大きく違う
アルバータ在籍校に通いながらの並行受講ができる学区がある留学生を受け入れている学区がある
ノバスコシア自分のペースで進められるオンライン制度がある新しい単位は取れない(救済と再履修のみ)
マニトバ州公認のオンライン校があるあり。ただし下記の制約

(2026年9月時点。各州教育省の公開資料より)

いくつか補足します。

オンタリオは、立て直しの選択肢が最も多い州です。 州の方針として、公立校に在籍しながら州の視察を受けた私立オンライン校で単位を取ることが認められています(Ontario Schools 第10章)。地域の選び方はオンタリオ州 高校留学ガイドもあわせてご覧ください。

BC州には、はっきりした制限があります。 州のオンライン学習方針は、「BC州内にいて対面のK-12プログラムに通っている留学生」にはオンライン科目を提供できるとする一方、**「BC州外に居住する留学生には提供してはならない」**と定めています(BC州 Online Learning Policy)。つまり、夏に日本へ帰っている間にオンラインで取り返す、という手はBC州では使えません。だからBC州では、夏の単位講習の重みが増します。BC州 高校留学ガイド

マニトバ州には、時期の制約があります。 12年生の英語と数学には州の統一試験があり、これが最終成績の20%を占めます。試験の実施は1月と5〜6月だけで、夏には実施されません(マニトバ州 Provincial Tests)。つまり12年生の主要科目は、夏の講習では取り切れないということです。

ノバスコシア州の夏期講習は、性格が違います。 公開されているプログラムは、最終成績が40〜49%だった科目の救済か、その年度に履修した科目の再履修に限られていて、新しい単位を取るためのものではありません。一方で、自分のペースで年度中いつでも始められるオンラインの制度があります。

そして、どの州でも共通する注意がひとつあります。「制度としてあるか」と「留学生が実際に使えるか」は別の話です。 公開ページに書かれていないこともあり、学区ごとに運用が違います。ここは個別に確認するしかありません。

もうひとつの分かれ目——学校の時間割の組み方

意外と知られていないことをお伝えします。同じ州の中でも、学校の時間割の組み方によって、立て直しの余地が変わります。

カナダの高校には大きく2つの型があります。

セメスター制は、1年を前期と後期に分け、それぞれで別の科目を履修します。前期で落としても後期で取り返せますし、同じ教科を1年で2段階進めることもできます。

リニア(通年制)は、同じ科目を1年かけて履修します。落とせば、取り直せるのは次の年度。同じ教科を1年に1段階しか進められません。

これが効いてくるのは、前提科目が足りないときです。たとえば11年生の英語を終えていないと12年生の英語には進めませんが、リニア校ではこの2つを同じ年度に収められません。夏の単位講習が、唯一の橋渡しになります。

実際にそうなったご家庭があります。1年だけのつもりでリニア校に留学したお子さんが、途中からカナダで卒業したいと考えるようになりました。英語がひとつ足りない。そこで夏に1科目取って橋を架け、翌年度に次の段階を履修して卒業しました。夏の講習がなければ、1年余分にかかっていたはずです。

学校を選ぶ段階で、その学校がどちらの型かを見ておく。 これは他ではあまり言われていないことですが、後から効いてきます。

見落としやすいこと

実務で何度も見てきた落とし穴を挙げます。

オンタリオ州では、11年生と12年生の不合格も成績証明書に残ります。 9年生と10年生は合格した科目だけが記載されますが、11年生以降は合否の両方が載ります。「とりあえずオンラインで取ってみる」という判断が、記録として残るということです。

在籍校への連絡は、必要です。 オンラインの学校のなかには「通っている学校の許可は要りません」と案内しているところもあります。登録だけならそのとおりです。けれどその単位を成績証明書に載せるのは、在籍校の校長の仕事です。先に話を通しておかないと、「取ったのに載らない」ということが起こりえます。

夏の単位講習は、現地にいないと受けられません。 授業料だけを見て予算を立てると足りなくなります。1か月の滞在費が別に必要です。

費用は、思ったよりかかります。 授業料に加えて、保険料、申請料、滞在費。1か月・1科目で、総額としてはそれなりの金額になります。弊社が実際にお預かりしたご家庭の請求書で見ると、おおむねカナダドルで2,500〜3,000の範囲でした(2025〜2026年の例。学区と年度で変わります)。

落とす前に、できること

ここまで「落としたら」の話をしてきましたが、その手前で打てる手もあります。

前提科目が足りないとき、校長の判断で免除できる制度があります。 オンタリオ州には「その生徒がこの科目で成功できると校長が判断すれば、前提科目を免除できる」という規定があり(Ontario Schools 第7章)、アルバータ州にも同様の仕組みがあります。アルバータ州では、上の段階に進んで合格すると、下の段階の単位が遡って認められる制度もあります。

免除を相談するときに効くのは、材料です。前の学校での成績、その科目での評価、本人の取り組み。根拠があれば、校長は判断できます。

必修科目を他の科目で代えられる場合もあります。 オンタリオ州では、校長の判断で必修のうち最大3単位まで他分野の科目に置き換えられます。

そして時間割そのものを見直すこと。苦手な科目を同じ学期に固めていないか、英語の負荷が高すぎないか。学期が始まる前なら、組み替えられることがあります。

科目の選び方そのものについてはGrade 11・12の科目選択もご覧ください。どの科目を取るかは、卒業だけでなく進学先の選択肢も決めます。

よくある質問

Q. 1科目落としたら、留年(ダブる)になりますか。 いいえ。カナダの高校には、学年をやり直す仕組みが基本的にありません。科目ごとに単位を積み上げるので、学年は上がったまま、落とした科目だけを取り直します。

Q. 日本に帰っている夏休みの間に、オンラインで取り返せますか。 州によります。BC州は州の方針で、州外に居住する留学生へのオンライン提供を認めていません。オンタリオ州には制度上の選択肢がありますが、就学許可の条件は生徒ごとに違うので、許可証の条件欄を確認したうえで判断してください。ここは一般論で決められない部分です。

Q. 卒業が延びた場合、同じ学校に残って卒業できますか。 できないことがあります。多くの教育委員会やプログラムが留学生に年齢の上限を設けていて、「その学年度の開始時点で18歳以下」といった形で、毎年度あらためて判定するところもあります。上限を超えると、同じ学校・同じ教育委員会では卒業できません。数え方はプログラムごとに違うので、延長を考える前に確認が必要です。

Q. 夏の単位講習は、誰でも受けられますか。 学区によります。地元の生徒だけに限っているところ、留学生を受け入れているところ、在籍している学区の生徒に限っているところがあります。窓口も学区の国際生プログラムであることが多く、一般の申込窓口とは別です。

Q. 卒業できれば、大学には出願できますか。 これは別の話です。たとえばアルバータ州の卒業要件は数学・理科が20レベル(11年生相当)までですが、大学の入学要件は30レベル(12年生相当)を求めます。卒業要件を満たすことと、進学先の要件を満たすことは、別々に確認する必要があります。 進学についてはカナダ高校留学の3つの出口もご覧ください。

Q. 学校が合っていない気がします。学校を変えることはできますか。 できます。ただし動けるのは年度や学期の区切りで、学期の途中からは基本的に難しいと考えてください。詳しくは個別にご相談ください。

Q. 学校が合っていない気がします。学校を変えることはできますか。
できます。ただし動けるのは年度や学期の区切りで、学期の途中からは基本的に難しいと考えてください。詳しくはカナダ高校留学は、途中で軌道修正ができますをご覧ください。

おわりに

単位を落とすことは、留学の失敗ではありません。立て直す方法はありますし、どの方法が使えるかは、いる場所と時期で決まります。 知っていれば手が打てるし、知らなければ手遅れになる。その差だけです。

そしてもうひとつ。無理に間に合わせることが、いつも正解とは限りません。力が足りないまま次の段階に進めば、その先で苦しくなります。高校のうちに積み上げ直すほうが、結果として近道になることもあります。 半年延びることを、私たちは失敗とは考えていません。

留学プランで大切なのは、パンフレット(学校情報)からのスタートではなく、プロフィール(留学生の詳細)からのスタートです。留学を希望されるお子さんについて詳しくお話をうかがい、学習面とそれ以外の部分のバランスを取りながら、ベストの選択をお手伝いします。

「うちの子、単位が危ないかもしれない」——そのお話をお聞かせください。いまの成績表と時間割を拝見できれば、何が起きていて、どの手が使えるのかを一緒に整理します。

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カナダ在住・カナダ高校留学エージェント歴20年(2006年創業)。2025年にカナダへ移住し、自身の子どもたちもカナダの学校に通っています。現地在住の立場から、費用・学校・生活の最新情報を直接お伝えします。

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