こんにちは。キャタリストカナダの水谷です。
「来年度は、違う学校にしたい」
いまカナダに留学しているお子さんから、あるいはご家庭から、そう聞こえてきたときの話です。都会に出たい、もっと小さな町がいい、日本人が少ない環境がいい、費用を抑えたい。理由はさまざまです。
先に結論をお伝えします。同じ州の中で移るのと、州をまたいで移るのは、まったく別の話です。 同じ州の中なら単位はほぼそのまま引き継がれます。州をまたぐと、単位の扱いから卒業の条件まで変わります。
この違いを知らないまま動くと、あとで取り返しがつきません。順番に見ていきます。
なお、そもそも「変えていいのか」という迷いについてはカナダ留学は、途中で軌道修正ができますに書きました。この記事は、移ると決めたあとの実務の話です。
同じ州の中で移る場合
学年度の区切りで移るなら、面倒な手続きはありません
まず、いちばん多いケースからお伝えします。学年度の終わりに合わせて移るなら、解約も違約金も、返金の交渉も起きません。
いまの学校、ホームステイ、留学生プログラムの契約は、その学年度で終わります。終わったものを解約する必要はありません。次の学校へは、新しく申し込むだけです。
単位も心配ありません。同じ州のカリキュラムで学んでいるので、取った単位はそのまま次の学校へ引き継がれます。別の学区でも、公立から私立でも、私立から公立でも同じです。
実務として必要になるのは、次の学校への出願、住む場所の手配、そしてカストディアン(後見人)の変更です。住む地域が変われば、多くの場合これも変わります。
つまり、区切りで動くかぎり、同じ州の中の転校はそれほど大ごとではありません。
学年度の途中で動く場合は、話が変わります
違約金や返金が問題になるのは、こちらです。
学校(あるいは教育委員会の留学生プログラム)、ホームステイ、そしてエージェント。この3つに、それぞれ期間と解約の規定があります。単位より先に、ここでつまずくご家庭がよくあります。
確認する順番はこうです。
- いまの学校・プログラムの契約期間と、途中解約したときの授業料の扱い(返金されないことが多い)
- ホームステイの解約通知の期限と、前払い分の返金規定
- エージェント契約の範囲(どこまでが契約に含まれていて、どこからが別料金か)
- カストディアンの変更手続き
ここを整理しないまま「移ります」と伝えると、費用が二重にかかったり、返ってくるはずのお金が返ってこなかったりします。動く前に、書面で確認してください。
そもそも学期の途中で移ると、そこまで進めた分が単位になりません。だから私たちは、区切りまで待てるなら待つことをおすすめしています。 待てない事情があるときは、費用の見通しを先に立てたうえで動きます。
州をまたいで移る場合——ここからが本題です
州が変わると、カリキュラムも卒業要件も変わります。日本で言えば、都道府県ごとに高校の制度が違うようなものです。
単位の変換は、自動ではありません
いちばん大事なことです。単位は「引き継がれる」のではなく、受け入れ校が評価して「認定する」ものです。 申請と、ときには交渉が必要な手続きだと考えてください。
実際にあったことをお話しします。
BC州で理科を修了していた生徒が、別の州へ移りました。届いた時間割を見ると、同じ内容の理科がもう一度入っていました。 なぜかというと、BC州ではその科目の名前が数年前に変わっていて、移った先の州では昔の名前が使われていたからです。名前が一致しなかったので、変換が漏れたのです。
私から受け入れ校のカウンセラーに連絡し、州のカリキュラム対応表を示して「この2つは同じ科目に当たります」と依頼しました。認められて、その生徒は別の科目を履修できるようになりました。
放っておけば、授業の枠をひとつ失っていました。 枠がひとつ減るということは、卒業要件か選択科目がひとつ埋まらないということです。時間も費用も、そのぶん増えます。
ご家庭が自分で手続きをすると、届いた時間割を「これが正しいもの」として受け取ってしまいます。気づけるかどうかが、そのまま結果の差になります。
判断するのは、受け入れ校です
ここは誤解されやすいところです。単位を認定するのは州の教育省ではありません。
| 州 | 単位を認定する人 |
|---|---|
| オンタリオ | 受け入れ校の校長 |
| アルバータ | 校長 |
| マニトバ | 校長 |
| ノバスコシア | 高校(通常はカウンセラー) |
| BC | 教育委員会・独立学校の運営主体 |
(各州教育省およびCMECの公開資料より、2026年9月時点)
州をまたぐ転校については CMEC(カナダ教育大臣協議会)が転校ガイドを公開していますが、これは州どうしの単位互換協定ではありません。 ガイド自身が「意思決定者が生徒を配置する際の補助資料」と位置づけています。つまり、載っているから認められる、という仕組みではないのです。
名前ではなく、中身で判断されます
では何を見て判断するのか。科目名の一致ではなく、中身の一致です。
マニトバ州は「授業時間、内容、プログラムの種類と質、達成の水準」を見ると定めています(マニトバ州教育省)。BC州は「内容が十分に重なっていること」を条件にしています(BC州教育省)。
ここから導かれる実務は、ひとつです。提出する書類の質が、認定結果を左右します。 成績証明書だけでなく、科目の概要や授業時間の記録まで揃えられるかどうか。先ほどの理科の件も、州のカリキュラム対応表という根拠があったから通りました。
見落とされやすい落とし穴——転入単位には成績が付かないことがあります
これは、ほとんど知られていません。
州によっては、転入した単位の成績欄が「合格」とだけ記録され、パーセンテージが付きません。 アルバータ州は「P」、マニトバ州は「S」、ノバスコシア州は「TRANSFER CREDIT」と「P」。いずれも州の公式な手引きに書かれています。
なぜこれが問題かというと、カナダの大学は12年生の科目のパーセンテージで合否を判定するからです。12年生の科目を転入単位で埋めてしまうと、出願の評価に使える科目が足りなくなる可能性があります。
アルバータ州は「パーセンテージ評価が必要なら、州内の学校でその科目を履修し直す必要がある」と明記しています。
12年生で州をまたぐ場合は、ここを必ず確認してください。 卒業はできても、志望する大学に出願できない、ということが起こりえます。
「その州で何単位取るか」の条件がある州があります
もうひとつ、知らないと設計を間違えるところです。
アルバータ州は「州外の資格の評価だけでアルバータの卒業証書は発行しない」と定め、卒業要件の教科領域で30レベル(12年生相当)の5単位以上を州内で修めることを求めています。
マニトバ州も「非マニトバ単位の評価だけでは卒業証書を発行しない」としており、留学生にはマニトバの学校で最低2学期の在籍と、5科目の履修を求めています(英語2科目、数学、保健体育、カナダ史)。つまり1年だけの留学でマニトバの卒業証書を取ることはできません。
BC州にも、留学生固有の条件があります。到着前の2年以上を英語・仏語以外で教育を受けた留学生は、英語・数学・理科・社会などの領域をBC州認定の教員の指導で履修する必要があり、他州の単位では埋められません。
卒業を目指して州をまたぐなら、移った先で何単位を取ることになるのかを、先に計算してください。
前の州での「科目の種類」と「点数」が、次の時間割を決めます
州が違っても、構造は同じです。どの州にも「大学進学ルートの科目」と「そうでない科目」の分かれ目があります。アルバータなら科目名の末尾の「-1」と「-2」、オンタリオならAcademicとApplied。呼び方が違うだけです。
そして受け入れ先は、前の州で何を、何点で取ってきたかを見て時間割を組みます。
こんなことがありました。ある州で英語を「進学ルートではない種類」で修了し、点数も高くなかった生徒が、別の州へ移りました。受け入れ校のカウンセラーは、1年で英語を2段階進める時間割を組みました。卒業と、その先の大学進学に必要な英語力を、実力から積み上げる設計です。
生徒のためを思った良い配慮でした。ただ、前期の英語を落とすと後期が受けられず、卒業も進学も同じ年度で崩れます。 逃げ道のない設計でもありました。
だから私は、時間割が届いた時点でご家庭にお伝えしました。「もしこれを落としたら、留学は1学期長くなります」と。事後に知らされるのと、選ぶ前に知っているのとでは、まったく別のことです。
時間割の組み方や、落としたときの立て直し方についてはカナダの高校で単位を落としたら、どうなるのかに詳しく書きました。
時間割が届いたら、確認する5つのこと
転校の実務で、私たちがいつもやっていることです。ご家庭でも、ここまでは確認できます。
- 前の学校で取得済みの科目と重複していないか(科目名が違うだけの同じ科目が入っていないか)
- 各科目が進学ルートの種類になっているか
- 卒業要件の残りが、その時間割で埋まるか
- 英語の配置に無理がないか(同じ年度で2段階上げる設計なら、落とした場合どうなるかを先に確認する)
- 以上を書面で「大丈夫」と返事をもらうまで詰めたか
5番目が、いちばん大事です。口頭の「問題ないと思います」は、あとで確認できません。学校とのやり取りは、記録が残る形で。
なお、どの科目がどの科目に当たるかを網羅した対応表のようなものは、公開されていません。最終的に判断するのは受け入れ校の校長・カウンセラーです。私たちも、毎回そこに確認しています。
就学許可はどうなりますか
小中高(K-12)の中で学校や教育委員会を変える場合、就学許可の手続きは原則として必要ありません。 カナダ政府は「現在の就学許可のまま勉強を続けられる」と案内しています(IRCC)。州をまたぐ場合も同じ枠組みです。
2024年11月から始まった「学校を変えるときの申請」は、大学・カレッジなど進学段階の学生が対象です。小中高の学校はすべて自動的に指定教育機関として扱われており、一覧にも載りません。
ただし、お手元の許可証に学校名や場所の条件が付いている場合があります。 条件欄は必ず確認してください。そして高校から大学・カレッジへ進むときは、新しい許可が必要です。
年齢の上限にも注意してください
転校の設計で卒業が1年延びる場合、もうひとつ確認することがあります。
多くの教育委員会やプログラムが、留学生に年齢の上限を設けています。 「その学年度の開始時点で18歳以下」といった形で、しかも入学のときだけでなく、毎年度あらためて判定するところもあります。
上限を超えると、その学校・その教育委員会では卒業できなくなる可能性があります。 転校で学年がひとつ増える設計を考えるときは、先に上限と数え方を確認してください。
動ける時期
カナダの高校の入学は、9月と2月の年2回が基本です。出願の締切は入学のおよそ半年前。学期の途中から移ることは、基本的にできないと考えてください。 途中で抜けると、そこまで進めた分が単位にならないからです。
ただし締切は目安です。空きがあれば受け入れてくれる学校もあります。「もう間に合わない」とご自分で決める前に、一度ご相談ください。
移らないほうがいい場合もあります
最後に、正直なところをお伝えします。
環境を変えれば解決することと、変えても一緒についてくるものがあります。 英語力、生活の習慣、人との距離の取り方。それを環境のせいにしたまま移ると、移った先で同じことが起こります。
州をまたぐ場合は、そこに実務の負担も乗ります。単位の認定、ホームステイとカストディアンの再手配、卒業要件の組み直し。動くこと自体にコストがあるということは、天秤に入れておいてください。
私たちは「移らないほうがいいと思います」とお伝えすることもあります。そのうえでご家族が移ると決めたなら、きちんとお手伝いします。この判断の考え方はカナダ留学は、途中で軌道修正ができますに詳しく書きました。
よくある質問
Q. 同じ州の中なら、単位はそのまま引き継げますか。 はい。同じ州のカリキュラムなので、取得済みの単位はそのまま次の学校へ引き継がれます。公立から私立、私立から公立でも同じです。実務の中心は、契約の区切りとカストディアンの変更になります。
Q. 州をまたぐと、単位はどれくらい認められますか。 一概には言えません。受け入れ校が科目の中身を見て判断するためです。科目名ではなく内容、授業時間、達成の水準で評価されます。提出する書類が揃っているほど、認定されやすくなります。
Q. 12年生で州をまたぐのは、やめたほうがいいですか。 できないわけではありませんが、確認事項が増えます。転入単位に成績(パーセンテージ)が付かない州があること、その州で最低限履修すべき単位が定められている場合があること。大学進学を考えているなら、特に慎重に設計してください。
Q. 転校すると、ビザ(就学許可)は取り直しですか。 小中高の中での変更なら、原則として手続きは不要です。州をまたぐ場合も同じです。ただし許可証の条件欄はご確認ください。
Q. カナダ国外の学校から移る場合も同じですか。 違います。オンタリオ州の単位(OSSD)を海外や日本で取っている場合は、オンタリオの単位を持ってカナダの高校へ転校するをご覧ください。
Q. 他のエージェントを通して留学しています。転校の相談だけでもできますか。 もちろんです。いまのご契約の内容によってできること・できないことがありますので、まずは状況をお聞かせください。
おわりに
カナダ国内の転校で失敗が起きるのは、たいてい同じ州の中の話と、州をまたぐ話を混ぜてしまったときです。
同じ州の中なら、見るべきは契約です。州をまたぐなら、見るべきは単位の認定と卒業要件、そして成績の記録のされ方です。この2つは、別の準備が要ります。
留学プランで大切なのは、パンフレット(学校情報)からのスタートではなく、プロフィール(留学生の詳細)からのスタートです。留学を希望されるお子さんについて詳しくお話をうかがい、これまでに積み上げたものとそれ以外の部分のバランスを取りながら、ベストの選択をお手伝いします。
「いまの学校から、別の学校へ移りたい」——そのお話をお聞かせください。いまの成績表と時間割を拝見できれば、どこへ移れて、何を確認すべきかを一緒に整理します。
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